コラム記事

予約殺到インバウンド向け料理教室「Experieat」のハラール事業戦略

大阪の難波でインバウンド向け料理教室を運営する「Experieat」。

2016年から食のダイバシティー対応に先進的に取り組んできた実績を持ち、その点で他社と比べて突出した特徴を持つ料理教室です。ハラール対応を軸に置きつつも、ヴィーガン、グルテンフリー、そしてコーシャーにも対応することで世界各国の日本食が好きな観光者から支持され、今では予約殺到のために受付制限する時期があるほどの人気ぶり。

そこで今回は、このExperieatのハラール対応を中心とした食のダイバシティー戦略についてオーナーのYUCCO様にお話をうかがいしました。

クッキングスールスタートのきっかけを教えてください

実は私自身が国内外を問わず旅行先で料理教室に参加する趣味があり、将来は地元の大阪で料理教室を開催したいと考え始めたことがきっかけです。

また学生時代から英語を学んでいましたので、語学を活用して海外の方を対象にしたビジネスにも挑戦したいと考えていました。そして、2016年に大阪の難波で外国人インバウンド向けの「Experieat」を立ち上げました。

コロナ禍の影響はありましたか?

2016年に事業を立ち上げて以降の4年間は兼業状態でしたが、2019年にトリップアドバイザーの大阪ベストクッキングスクールTOP10に選出されたことで一気に集客が増加し、その流れでExpedieat事業を専業にする決心がつきました。

しかしながら、2020年以降はコロナ禍による訪日観光が完全にストップしたことにより、残念ながら3年間は休業して別の事業にシフトせざるを得ない状況になりました。

事態が好転したのは2023年3月頃と記憶しています。今ではコロナ禍前以上の集客を維持し、以前と比較すると欧米からの来客数が増加していることも特徴です。

食のダイバーシティー対応について詳しく教えてください

海外旅行先の料理教室で「誰でも楽しめる料理教室は今後日本でも必要になるのではないか?」と感じ、美味しい日本料理を宗教や原材料による制限で楽しめないのはフェアではないという考えのもと、食のダイバーシティー対応について真剣に考えるようになりました。

立ち上げ当時、大阪市内にはすでに20以上の料理教室があったため、「何か差別化できるアプローチが必要」ということで独学でハラール、ヴィーガン、コーシャー、グルテンフリーを研究し、料理教室に来られるお客様からのフィードバックやヒアリングを通じてサービスの改善を図っています。

これらの取り組みについてお客様から評価をいただいていることはもちろん嬉しいのですが、それ以上に驚いたことが、感謝をされることです。また、私の料理教室ではイスラム教徒と非イスラム教徒が同席をする機会が多く、お互いの食文化を知る機会としても喜ばれています。

食のダイバシティー対応として、私たちはいかなるメニューにも豚を使わない点をしっかり伝えています。メニューによっては、特に調味料などはアルコール由来のものを使う場合もありますが、もちろんイスラム教徒の方にはハラール認証の原材料を使用したものを提供していますのでご安心ください。

タイミング次第ではイスラム教徒と非イスラム教徒の方が同席することもあります。そのような場合は、先に挙げたような調味料などに関してはあえてこちらからは限定をせず、お客さまに選択肢を提供することを意識しています。これについては実際に取り組んでみて、お客さまに選択肢がある方が喜ばれる機会が多いと感じています。

ハラール料理の提供で注意されている点はありますか?

食のダイバシティー対応で大切にしている点は、「豚由来のものは一切使わない」ことです。調味料など、その他の原材料に関してはハラール認証のものを用意していますが、非イスラム教徒向けに一般的な調味料も準備しています。

お客様から常にフィードバックをいただき、原材料の選定とサービスの改善を図ることを大事にしています。イスラム教徒の方からの予約はほぼ100%、原材料に関する質問をいただきます。もちろん私たちは安心してお越しいただけるように事前にしっかり準備していますし、教室自体でのハラール認証は取得していないものの、できることと無理なことをしっかりとお伝えしているので信用をしていただいていると感じています。

集客はどのようにされていますか?

主な集客は自社ウェブサイトとAirbnbなどの集客プラットフォームでの掲載です。2016年の段階で掲載していたこともあり、先行者利益もあったと感じています。

以前に某国のFBグループで私の料理教室が紹介されたことがあり、それ以降一部の国からの予約が増えていますし、今後はSNSを介した集客に注力したいと考えています。

弊社のサービスを発注された決め手は何ですか?

業種に関わらず「集客の安定」という点は共通の課題ですし、我が社もそんな一社です。他社のプラットフォーム利用を中心とした集客のため、自社ブランドを多くの方に認知させるためにも自社のプラットフォームを介した集客に注力したいと考えていました。

今の時代、SNSはブランディングや集客の点で必要不可欠なものですが、私自身が苦手な分野ということで後回しにしていたのも事実です。そんな中、ハラール関連のコンテンツ発信と事業展開しているArima Food Labさんの活動を知る機会があり、問い合わせをしてみたのがきっかけです。

SNS運用のサポートだけではなく、イスラム教徒への理解やハラールに関する知識、ハラール飲食店への集客成功事例や商品を海外へ輸出されているというビジネスの実績も安心して任せられる点でした。

Experieatさんが利用されたサービスはこちら。

SNS集客の成果があれば教えてください

アカウントの開設後、東南アジアのハラール関連メディアに掲載されたこともあり東南アジア在住のイスラム教徒から問い合わせが格段に増えています。また、インフルエンサーとのコラボ企画を実施したところその後インスタグラムのDMで予約が入ったり、欧州のインフルエンサーからも協業の提案をいただくなど、安定的な集客に成功しています。

今後の戦略を教えてください

3年間の休業からコロナ禍明けのインバウンド需要拡大の影響もあり、ありがたいことに毎日ご予約をいただいています。まずは現在のサービスのさらなる改善に努めたいと考えると同時に、自社プラットフォームを介した予約率の向上が今の課題と考えています。

そして事業ポートフォリオ化を目指して、料理教室に付随したサービスによるマネタイズも検討しています。将来的には料理教室事業を介して海外からのオファーがあれば、ぜひ挑戦したいですね。

訪日観光客向けにクッキングスクールを運営したい方にアドバイス

日本人とは異なる文化や宗教というバックグランドを持つ海外からのインバウンドを対象とした事業を運営する経験から、3つのことをお伝えしたいです。

1.聞かれた質問には答えられる準備が大事
文化や宗教という背景から考えても、彼らにとって日本は不安不満不便が多い国でもあります。彼らが安心できるように、彼らの悩みを解決できる準備は必要不可欠だと思っています。

2.商品を売るのではなく体験を売る
訪日観光の一環で料理教室に来られる方が大半ですので、彼らにいかに楽しんでもらうかという視点は非常に重要です。お客様がパフォーマンスをする場、つまり実際に自分が体験できるシーンを調理工程に取り込むと非常に反応が良いため、ぜひ検討されてはどうでしょうか?ちなみに私たちの料理教室では餃子をひっくり返す作業が皆さんに非常に好評です。

3.おいしいのは当たり前
おいしさは最低条件であって差別化条件にはなりません。お客様の不安不満不便を解決できる差別化サービスこそが集客を成功させる上で最も大事な要素ですので、クッキングスクールの立ち上げ前にしっかり検討されることをおすすめします。私のクッキングスクールでは「宗教や思想由来の悩みを解決するアプローチ×日本食」をかけあわせた差別化戦略によって集客ができました。

インタビューを終えて

今回は、Experieatのハラール対応を中心とした食のダイバシティー戦略についてのインタビュー記事を紹介しました。

市場が食のダイバシティー需要に意識が向く前の段階で取り組まれたことで大阪では圧倒的なポジショニングと集客力を獲得したExperieatですが、その現状に満足することなく常に顧客から学ぶ姿勢を忘れず、サービスと食のダイバーシティに関する知識のアップデートを日々継続されている姿勢には頭が下がります。

ハラール対応に関しては、実は独学で対応することも十分可能です。彼らのようにお客様からのフィードバックを元に改善するスタイルで通用し、成功につながっていることからもハラールはあなたが想像するような難しいものではないことはお伝えしたいです。そして、イスラム教徒にとってその姿勢は非常に嬉しく感謝されますのでぜひ多くの方にチャレンジしていただきたいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

会社情報

社名:Experieat

住所:大阪市中央区(なんば駅から徒歩10分)

HP:https://experieat.com/

IG:https://www.instagram.com/experieat.jp/

関連記事

ページ上部へ戻る