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ハラール認証取得の前に確認するべき大事な5つのポイントについて解説

日本では少子高齢化によるマーケット縮小を受けて、多くの食品事業者が海外進出や輸出を検討し始めています。大手企業は安定した資本や商品力、営業力を背景に海外市場での生産に注力することが可能ですが、中小や零細企業にとって海外進出は企業の生死を分ける投資にもなるため簡単ではありません。

しかしながら、そんな中小企業でも既存商品の輸出であればリスクを最小限に抑えつつチャレンジすることが可能です。ここ5年ほどの間に多くの中小企業が東南アジアへの輸出を目指し、ハラール認証を取得しているようです。私の前職の企業では2020年11月にハラール認証を取得し、マレーシアをはじめとする東南アジアのイスラム圏に輸出をスタート。今でもローカル小売店にて定番採用されています。

しかしながら、ハラール認証を取得したからと言って当地で簡単に売れるというわけではなく、多くのメーカーにとって輸出が険しい道であることに違いはありません。

今回の記事では、私の実体験に基づいた「ハラール認証取得の前に確認するべき大事な5つのポイント」について説明します。

ハラールであるべき必要があるのか?

マレーシアで製造販売されている商品の大半はハラールに対応していますが、これは当然のことです。顧客対象が国民の約65%を占めるイスラム教徒のマレーシア、現地の購買力やローカルのニーズに対応した商品を追求していけば自ずとハラール対応こそがビジネスの安定化にもつながります。

では、日本企業にとってはどうでしょうか?日本から輸出される日本スペックの食品は実際に現地で人気があることも事実です。

しかしながら、マレーシアに輸出される日本製の商品はマレーシアの人口の約23%を占める中華系と日本人を中心とする駐在員による消費がメインとなっています。そしてこれらの商品の多くはノンハラールであり、中には豚やアルコールを含有している商品も少なくありません。

特に料理の「さしすせそ」に関連する商品は家庭での需要が高いため、当地の小売店で販売されている商品のSKUも多岐にわたります。このような商品は輸出による売上拡大が見込めるため、ハラール認証を取得する必要性が低くなる事情もあります。

以上にような事情を考慮し、本質的にハラール認証を取得するべき商品であるか?について考えることが大事です。

そもそも輸出ニーズはあるのか?

食の輸出を検討する場合、基本的にはローカル需要を取り込まなければなりません。日本人駐在員家族のみを対象とすると売上規模の拡大は見込めず、いずれジリ貧となる可能性が高いでしょう。

先述の「さしすせそ」に関連する食材は特に日本食を提供する飲食店で大きな需要があるため、長く安定して輸出を継続できます。しかしながら、家庭料理向けの商材や菓子などの個人を対象とした商品は、現地でのニーズが低ければ販売することは非常に厳しいのが現実です。

例えば、ハラール認証を取得していない商品ですが野菜ジュースで有名なカゴメは紙パックとペットボトルの商材(日本製造)を8SKUほど、現地で販売しています。日系商材を取り扱う高級小売店は当然のこと、ローカルを対象としたミドルレンジの小売店でも販売中。野菜・フルーツジュースに需要があるようですが、現地に競合が少ないという背景も手伝い販路拡大を続けています。

消費期限は輸出仕様に対応しているか?

ここからは、食品の輸出シーンにおける現実的な話をしていきましょう。

カップ麺やポテトチップスなど商品ブランド力や販売力がある商品以外は消費期限が最低一年なければ商談のテーブルに乗ることも厳しい、というのが輸出する上で大事なポイントです。

日本では賞味期限が短いほど鮮度感があり、余計な添加物など含有していないため美味しいという評価がありますが、輸出においては「できるだけ消費期限が長い方が良い」が常識になっています。

ここで私が、「賞味期限」と「消費期限」という二つの言葉を使っているのにお気づきでしょうか?

日本では加工食品に対して賞味期限を使用するのが一般的ですが、輸出に関しては「物理的に喫食しても問題がない」という消費期限の概念を持つことが重要です。「いや、弊社の商品は美味しさ重視なので半年のままで提案する」というスタンスでも問題はないですが、商談後に採用される可能性は限りなく低くなるため、この点は事前に検討されることをおすすめします。

この理由としては、以下の点が影響しています。

①輸出にかかる時間

②小売の取引条件

発注後、日本国内港に到着しその後出港。現地に入港して通関後に商社の倉庫に到着。そして小売の棚に陳列される、という流れですが、この期間は最低2カ月はかかると考えておいた方が良いです。そのため賞味期限半年の商品ですと残りは4カ月しかありません。また期限残のルールを設定している小売店であれば、さらに販売期間が短くなります。

海外では常識の商流ですが、小売店は商社やメーカーに対してコンサイメントという契約を締結することが一般的です。業界用語で言うと消化仕入れ、いわゆる委託販売という取引形態です。しかしながら、商社は日本から仕入れる際に前金での支払いが一般的ですので、小売店からいかに早く現金を回収するかが大事なポイントになるのです。そのため、人気のある有名ブランドの商品やできるだけ消費期限の長い商品が取り扱いで優先される、という背景があります。

現地での売価は?

「この商品はこだわっていて美味しいのでぜひマレーシアで販売したい」という相談を受けることがあります。私も前職が食品メーカーですのでこだわりを追求すれば価格が上がる事情も分かりますし、そのようなマーケットがあることも理解しています。

しかしながら、マレーシアは小売りでの販売売価が他の東南アジアと比較してもシビアであると感じています。以前こちらのブログで紹介しましたが、マレーシアの平均年収はおおよそ80 万円です。クアラルンプールやセランゴール州での平均世帯収入は360万円なのですが、輸入される日本食品を頻繁に購入できるのは一定層に限定されるのです。

日本食を取り扱う主力ローカル小売店で売価をチェックしたところ、日本食コーナーの商品の大半が日本の売価の2倍未満であることがわかりました。競争力のある商品であれば、1.5倍ほどの売価設定となっています。

また、絶対売価自体が大きくなると採用が難しくなるという点についてもお伝えしなければなりません。価値のある高価格帯商品の輸出を検討する場合は、内容量で売価をコントロールすることで採用の可能性が上がりますのでご検討ください。

取り扱い商品は小売り、レストラン向け?

実は食品の輸出において圧倒的に大きな需要を占めるのはレストランなどの飲食店向け卸です。ここマレーシアでも日本料理の需要は毎年拡大しており、新規出店が続いています。

日本ハラール認証を取得している商品で圧倒的に販売量を誇る商品は、ヤマサのハラール醤油。こちらの醤油は飲食店向けはもちろんのこと、現地の食品製造メーカーの原料としても採用されています。

ヤマサのような大企業ではなくとも、ハラール認証を取得した乾麺メーカーの商品も実は現地の飲食店でトッピングとして採用されている例もあります。レストラン需要を取り込むと商売が安定しますので、レストランと相性の良い商材を有する企業の方は業務卸向けの営業も検討されることをおすすめします。

実は日本でハラール認証を取得する食品メーカーは、小売店を対象とした商品を取り扱う傾向が強いという印象を受けています。私の前職の企業では菓子を製造販売していたので、対象が小売店のみでした。マレーシアの飲食店向けに営業を行ったこともありますが、「菓子であれば1ケースもいらない。1袋から買えるのであれば検討する。」という結果でした。そのため最近では飲食店向けの卸に営業をかけるなど、小売以外のルート開拓にも挑戦しています。

小売店のみを対象とする商品であれば、マレーシアをはじめとする東南アジアのイスラム圏をターゲットにして商売の拡大を視野に入れた展開が望ましいと考えています。弊社では、ブルネイとシンガポールに販路がありますので、ご興味がある方はぜひお声掛けください。

まとめ

今回の記事では、「ハラール認証取得の前に確認するべき大事な5つのポイント」について解説しました。

ハラール認証自体は、御社の取り扱い商品のスペック次第では比較的容易に取得できてしまいます。しかしながらハラール認証取得はゴールではなく、そこから販路開拓がスタートするという点を忘れてはいけません。

今回お伝えしたことは私自身がハラール認証取得の経験とマレーシアでの販路開拓で身をもって経験した内容ですので、特に中小企業のメーカー様には参考にしてもらえる内容だと自負しています。ハラール認証取得を検討している方は、まず冷静に上記で説明した5つのポイントを分析してみてください。

また、「ハラール認証取得を検討しているが、その後の販路を含めて一度相談したい」という方がいらっしゃいましたら、ぜひお問い合わせフォームよりご連絡ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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