コラム記事
10.132023
マレーシアの物価は日本と比較して本当に安いのか?を徹底検証
観光を始め教育やリタイア移住、そして就労の拠点としても日本人に人気の国マレーシア。
「日本である程度貯金をしていつかは東南アジアでのんびり暮らしたい」「マレーシアに移住して生活コストを抑えながら貯蓄を増やしたい」と、マレーシアを将来の暮らしの拠点として考えている方も多いのではないでしょうか?
東南アジアは物価が比較的安価、というイメージを持たれている方も多いでしょう。そのような一面があることも事実ですが、経済成長中のマレーシアにおいて果たして本当に全てのものが安いのでしょうか?
今回の記事では、マレーシアで生活するにあたり欠かせない”物価”についてマレーシアと日本を比較検証します。
世界の物価統計から見るマレーシアの位置づけ
さて、まずはマレーシアの物価指数です。世界でどのような位置づけなのでしょうか?
「NUMBEO」という世界各国の国や都市に関する統計データをまとめたサイトがあります。基準値の国を100として、それぞれの国を数値で相対評価する仕組みとなっています。
2023年中間期のデータとなりますが、この統計によるアジア主要国の物価は以下の通り。
6位 | シンガポール(85.9) |
19位 | 韓国(69.2) |
43位 | 日本(54.3) |
87位 | タイ(38.5) |
93位 | 中国(36.5) |
95位 | フィリピン(35.9) |
100位 | ベトナム(34.5) |
109位 | マレーシア(32.3) |
115位 | インドネシア(30.8) |
138位 | インド(22.9) |
この統計での上位国はスイス(2位・117.3)、アイスランド(5位・87.7)、ノルウェー(9位・82.2)等となっており、当然ながら欧州の物価が高い傾向です。そしてマレーシアは109位。ちなみに最下位はパキスタン(140位・17.6)となっています。
このように世界基準から見てもマレーシアの物価順位は下位に近く、比較的物価が安い国ということがお分かりいただけます。
何より日本の54.3という数値を見て驚かれた方も多いのではないでしょうか。東南アジアでは未だに、日本は「物価の高い国」というイメージを持たれていますが、このイメージが覆るのも時間の問題でしょう。
マレーシアと日本の物価比較
次に、同じく「NUMBEO」のデータを使ってマレーシアと日本における具体的な物価(平均値)を比較してみましょう。今回はそれぞれの主要都市であるクアラルンプールと東京で比較します。
飲食店の価格
それぞれの地域におけるレストランのメニューや、そこで販売されている商品をピックアップしてみました。
クアラルンプール | 東京 | |
レストラン(安価) | 490円 | 1,000円 |
コース料理(中級)2名分 | 4,100円 | 6,000円 |
国産ビール(0.5リットル) | 570円 | 395円 |
カプチーノ | 390円 | 470円 |
水(0.33リットル) | 70円 | 114円 |
ショッピングモールのフードコートなど安価な飲食店の場合、クアラルンプールは東京の半分の価格で食事を摂ることが可能です。
例えば、クアラルンプール屈指の屋台ストリート「ジャラン・アロー」ですと、マレーシアで有名なハンバーガー、ラムリーバーガーがRM3(90円)、焼き鳥サテーが10本でRM16(480円)で購入することができます。
レストランではなくこのようなローカルの屋台で食事をすれば食費を抑えることは可能ですが、毎日そのような食事を主体とすることはあまりおすすめできません。
使用している原材料や油は品質が良いとは言い難く、日本人がそれを日々の食事に取り入れることは健康面を考えると厳しい、というのが現地に住んでいて感じることです。
このような事情はありつつも、以上のように飲食店での食事は全般的にマレーシアの方が安い傾向にあります。
しかしながら、寿司などの日本食となると日本からの輸入食材を多く取り扱うため、マレーシアでは高価な食事として位置づけられています。
新鮮かつ手頃で美味しい寿司を食べ慣れた日本人がマレーシアでクオリティの高い寿司を食べようとする場合は、日本の価格と比較して最低でも1.5倍〜2倍の金額は覚悟しなければなりません。
そして、そのような店は日本のような路面店で展開しているものではなく、大半は高級ホテルやブティック街に出店しているため家賃も高額となるため、それが価格にもさらに影響しているという事情もあります。
お酒はどうでしょうか。マレーシアは人口の約70%がイスラム教で、彼らは宗教上アルコールの摂取が禁じられているため国民の大半がお酒を飲みません。またムスリム主体の政治運営という背景もあり酒税は高めに設定されているため、当然お酒の値段は高くなります。
その他、世界中の物価を比較する際に使われている”ビックマック指数”と呼ばれるものがあるのことをご存知ですか?
ビッグマック指数とは、イギリスの経済誌『エコノミスト』が年に2回発表している経済指標です。マクドナルドの店舗は世界中にあり、その商品の一つであるビッグマックは材料や調理法などがほぼ共通。そのためビッグマックを基準にして各国の物価水準の比較ができるという手法です。
2023年7月時点では、マレーシアのビックマックはUSD2.92(430円)、日本のビックマックはUSD3.17(470円)となり、マレーシアが少し安くなっています。
実際、私自身もマレーシアで子供を連れてマクドナルドに行くことがありますが、価格はこの指数通り「少し安いな」と感じる程度です。それどころか、日本に帰国した際に日本マクドナルドの値上げに驚くほどです。
小売店の価格
続いては、スーパーの食料品や衣類の販売価格を比較します。
クアラルンプール | 東京 | |
牛乳(1リットル) | 250円 | 210円 |
米(1キロ) | 190円 | 410円 |
卵(12個) | 260円 | 306円 |
鶏ささみ(1キロ) | 620円 | 995円 |
バナナ(1キロ) | 210円 | 377円 |
じゃがいも(1キロ) | 140円 | 450円 |
水(1.5リットルボトル) | 90円 | 118円 |
タバコ(20パック) | 570円 | 570円 |
ジーンズ | 7,250円 | 4,700円 |
チェーン店の夏服(H&Mなど) | 4,480円 | 3,656円 |
スーパーで販売されているものの売値は、マレーシアの方が割安なものが多いです。しかしながら、それらの大半はマレーシア産や中国産のもので、オーガニック商材やオーストラリア産、マレーシア産でも日本メーカーが作る野菜などは日本と比較するとかなり割高な印象を受けています。
特にマレーシア在住の日本人が普段買い物に行く小売店はマレーシアでは高級スーパーという位置づけになるため、決してマレーシアだからといって全てが安いということはありません。また、日本人はどうしても主食として日本食を食べる傾向がありますので、日本製の材料購入も輸入品ゆえに割高となります。
衣食住の「衣」にあたる衣類の価格はどうでしょうか。
マレーシアにも店舗を構える「ユニクロ」は、品質の良さからマレーシアのZ世代からも人気を得ています。
人気商品「エアリズム」のキャミソールの値段を比較してみましょう。マレーシアだとRM40(1,200円)。これらの商品は中国や他国での製造という背景は同じなのですが、日本では990円で販売されているためマレーシアの方が割高です。3年前の為替(25円=RM1)で計算すると同じですので、為替の影響が大きいとも言えます。
ちなみにローカルの路面店等でノンブランドの衣類を購入する場合は、マレーシアの方が圧倒的に安価で購入することが可能です。しかしながら、価格訴求の場合は高品質を求めることは難しいでしょう。
交通料金
次に、マレーシアでの移動に欠かせない交通料金について比較してみましょう。
クアラルンプール | 東京 | |
電車(片道) | 95円 | 150円 |
タクシー(1キロ) | 158円 | 420円 |
ガソリン(1リットル) | 65円 | 160円 |
マレーシアのクアラルンプール中心部は交通公共機関が充実していますが、日本のように定時運行しているわけではありません。そのため、ローカルを含め自家用車やタクシーを使う方もまだまだ多いです。
電車の場合、初乗りRM1.1(33円)から乗車ができ、クアラルンプール近郊であればRM1.1(33円)〜RM3(90円)前後で利用が可能です。
また、マレーシアでの交通手段を語る際に欠かせないのが「Grab」という配車アプリのシェアライドサービスです。これはローカルはもちろんのこと、長期滞在の外国人や観光客等多くの人達の主流のインフラとなっています。東南アジアのほぼ全域で利用が可能な素晴らしい移動インフラアプリという点も、人気の理由です。
需給バランスや時間、車種のグレードにもよりますが、短距離の乗車であればRM5(150円)から利用可能。オフピーク時のKLIA(クアラルンプール国際空港)からKLCCまでの乗車運賃は最安値RM45(1,350円)程です。
家賃
最後に、長期滞在する上で欠かせない住居の物価比較です。
クアラルンプール | 東京 | |
中心地のアパート (ベッドルーム×1) | 69,800円 | 138,760円 |
郊外のアパート (ベッドルーム×1) | 44,920円 | 82,610円 |
中心地のアパート (ベッドルーム×3) | 137,300円 | 328,100円 |
郊外のアパート (ベッドルーム×3) | 79,070円 | 166,090円 |
日本でアクセスがいい都心に住もうとすると家賃は高い割に狭くなりがちです。一方、マレーシアの場合は日本より家賃が安く、広さにも余裕があります。また、大半のコンドミニアムにはジムやプールが常設されていることも魅力的な点です。
家具付き物件が多いため、引越しの際の初期費用が日本よりも抑えられることもポイントのひとつ。
しかしながら日本とは異なり、マレーシアの物件は確実に何かしらのトラブルが生じる点は覚悟が必要です。具体的な事例でいうと、水が出ない、止まらない・電気が止まる・天井のパネルが落ちる・オーナーによるローン滞納でインフラが強制的に止まる等々、挙げ出したらキリがないほどです。脅かすわけではありませんがこのあたりの事情は日本と大きく異なりますので、物件を探す際は信用できる不動産屋を頼ることをおすすめします。
せっかくですから楽しい話題もということで、クアラルンプール、東京で展開しているある高級ホテルの価格も比較してみましょう。
ラグジュアリーホテル「ザ・リッツ・カールトン」。同じ日付で価格検索をすると、クアラルンプールは2人部屋で17,420円〜、東京は2人部屋で166,100円〜となっており、金額に大きな差があります。
私も宿泊したことがありますが、クアラルンプールの中心街ブキビンタンに位置しているのでアクセスが抜群。建物自体は古いので最新のホテルと比較するとインフラは見劣りしますが、サービスや料理に関しては最高のものを提供してもらい、非常に満足しました。
まとめ
今回の記事では、マレーシアの物価は日本と比較して本当に安いのか?をいくつかの切り口で検証してみました。
観光客視点やローカル視点でマレーシアを見ると、相対的に物価が安いことは事実です。しかしながら、日本人として日本人的な生活を長期滞在で営むとなれば話は別です。
日本食に使用する調味料や食材を購入したり、レストランでそれなりのレベルの日本食を食べたりするなど日本人として日本文化をベースにした生活、特に食生活の面でそのような暮らしを営むと、日本の約2倍の費用は覚悟しなければなりません。半面、価格訴求で衣食住を回そうとすると、日本と違って安全が保証されないというリスクも考える必要もあります。
これからも経済成長が期待されるマレーシアであなたがどのような将来を望むのか。その展望によって、今回の検証内容についての捉え方も変わってくるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
<参考サイト>