コラム記事
10.152023
日本で取得したハラール認証はマレーシアや東南アジアで通用するか?
「JAKIMやMUIのような本場のハラル認証マークがないと、現地で認められないのでしょうか?」という相談を受けることがあります。これらはマレーシアやインドネシアが国家レベルで管理しているハラール認証。確かな信頼性があると捉える方もいるでしょう。
実際に日本製造の商品で、それらの認証を取得しているメーカーがいることも事実です。私自身は日本ハラール認証取得の商品を2020年より東南アジアで販売しています。ヤクルトやおたふくソースなど、現地でJAKIM認証を取得しているメーカーとは条件が違いますが、日本ハラール認証を取得したメーカーとして現地で事業を展開している企業は弊社以外見たことはありません。
今回の記事ではこの3年間の経験を元に、東南アジアにおける日本ハラール認証の有効性について説明したいと思います。
弊社の実績
- 2020年11月よりマレーシアへ輸出開始
- マレーシア主力ローカル販路で定番導入(最大6SKU)
- シンガポール、ブルネイ、インドネシアで定番採用
目次
日本ハラール認証は東南アジアで通用する
まず結論から申し上げると、「日本のハラール認証は東南アジアで(条件付きで)通用します」が私の答えです。ただし、これについてはB2CとB2Bの両側面を説明する必要があります。まずは、輸出する上で外せないB2Bから説明します。
当該国のハラル認証団体が認めたものに限る
ハラール認証商品をマレーシアで販売する際、特に小売店はハラール認証の証明書や相互認証について確認します。弊社も初回導入時に商社経由で証明書を提出しており、更新チェックで再提出を求められる際も都度対応しています。JAKIMは公に「JAKIMと相互認証を締結している各国のハラール認証のみ、ハラールと認める」と宣言しています。そのため、マレーシア輸出に際しては相互認証は必須事項と捉える必要があります。
「勧められて、とあるハラール認証を取得した。しかし海外では認められておらず、別の団体で取得してくださいと言われた。」と言う話も聞いたことがあります。現在日本には多くのハラール認証団体がありますが、ローカルハラールと呼ばれる日本国内のみで有効という認証も少なくありません。このような団体は特にインバウンド集客を目的としたものが多く、輸出を目的とした場合には適さないケースもあるため注意が必要です。
もしあなたが日本でハラール飲食店を運営したいのであれば、ローカルハラール認証で十分です。昨今では自社規格のムスリムフレンドリーポリシーのみで運営している企業も増えている現実もあります。
話を戻しますが、シンガポールやブルネイに関しては各国の相互認証が必須という話は聞いたことがありませんし、実際に過去数年現地で商品を販売していて問題になったことはありません。東南アジアへの輸出を考えた場合、マレーシア導入を最優先とした相互関係にあるハラール認証団体での認証取得を検討されることがベストと言えます。
JAKIMが認める7つの日本ハラール認証団体
JAKIMは海外のハラール認証団体と相互認証を締結しており、その数なんと、41カ国67団体と世界規模のネットワークを構築しています。日本は7団体が相互認証を結んでおり、その団体で取得したハラール認証は正式にハラールとして認められています。
日本でJAKIMが認める7団体は以下の通り。マレーシアへの輸出を検討するのであれば、この中の1団体を選択する必要があります。
英語名 | 日本語名 |
Japan Muslim Association | 日本ムスリム協会 |
Japan Halal Association | 日本ハラール協会 |
Japan Halal Unit Association | 日本ハラールユニット協会 |
Japan Islamic Trust | 日本イスラーム文化センター |
Nippon Asia Halal Association | 日本アジアハラール協会 |
Muslim Professional Japan Association | ムスリムプロフェッショナルジャパン協会 |
Prime Certification And Inspection Company Ltd |
マレーシア市場での導入事例
「マレーシアへ輸出するならローカルの販路を獲得したい」と思われる方は多いのではないでしょうか。実は日系販路よりもローカル販路での導入は難易度が高く、日本ハラール認証を取得したメーカーでローカル販路にて採用されているメーカーはほんのわずか、という現実があります。
しかしながら、クアラルンプールのみならずペナンやジョホールバルで店舗展開している小売店も対象になってくるため、しっかり認知が進むとそれなりの販売実績を積み上げることも可能です。
ローカル販路で定番採用されている代表的な日本ハラール認証取得メーカー名は、こちらです。
- 有馬芳香堂
- 小杉食品
- 東亜食品工業
- 前原製粉
- 原田製茶
- ひかり味噌
実は、ローカル販路導入には”あるポイント”が必要です。上記のリストに挙げた中には弊社のサポートで定番導入が実現したメーカーもありますし、現在はまだハラール認証取得申請中にも関わらず定番導入の計画が進んでいるメーカーもあります。そのポイントの詳細についてはぜひ弊社までお問合せください。
違法ハラール商品が出回るマレーシア
2020年にマレーシア中で大スキャンダルとなったハラール認証偽証事件。馬肉やカンガルー肉をハラールと偽り、過去40年間販売していたことが明らかとなったのです。この事件は規模はもちろんのこと、40年間という長きに渡って偽装し続けていたことからも相当罪が重いものでしょう。非イスラム圏となる日本ではハラールマークの取り扱いに関する罰則などはありませんが、ここマレーシアではムスリムの食生活を脅かすことにつながり重罪となる、という点を食品メーカーは肝に銘じる必要があります。
その対策事例:ECサイト
マレーシアを始めとする東南アジアで最大規模のECプラットフォーム「SHOPEE」では、2022年9月より偽装品対策の一環としてハラール商品の出品ルールを制定しています。弊社もSHOPEEにて日本ハラール専門ストアを運営しているため、ルールの確認そしてハラール認証書のチェックを再度行ないました。
では、ハラール商品の出品ルールとはどのようなものでしょうか?以下はルールの一部を抜粋したものです。
上記の通り、JAKIMが相互認証を与える海外認証団体の認証取得品でなければ、ハラールとして販売はできません。違反した場合は法人/個人を問わず厳しい罰則があります。
そして、以下はハラール認証として謳う場合に該当する商品群です。日本製のハラール認証商品の大半は食品ですが、Tokyo Organicなど日本製ハラール化粧品をマレーシアで販売する企業についてもこのルールを満たす必要があります。
現地のローカル顧客層の本音
これまでの説明の通りB2B面では厳格なルールが制定されつつありますが、最終消費者となる一般顧客層の感覚はどのようなものでしょうか?本音を探るため、弊社が運営するインスタグラムアカウント(8万人フォロワー)にてアンケート調査を実施しました。
質問:ハラールロゴがある日本食品についてあなたはどのようなアイデアを持っていますか?
- 自国のハラール認証と相互認証のものである必要がある(201票、26%)
- ハラールロゴがあれが、なんでも良い(361票、47%)
- 自国のハラール認証しか信用しない(43票、6%)
- 日本ハラール認証は信用に値する(171票、22%)
このアンケートでは「一般消費者はハラール認証ロゴがあればまず問題ない」という方が多いという結果に。マレーシアは世界中から多くの商品を輸入しており、先日はなんと南アフリカのハラール認証ロゴ入りのお菓子を発見しました。
一般消費者が相互認証の確認のために毎回JAKIMのHPにアクセスしてチェックをするとは、到底思えません。そのチェック機能は小売店や商社が果たす役割であり、顧客に安心を提供する責任としてチェックが正しく働いているということです。
中東はハラール認証が不要?
「イスラムといえば中東なので、そのエリアにも輸出したい。」と考える方も多いでしょう。
以前、中東の食品卸(グロッサリー)のバイヤーと商談したことがあります。彼らから「ハラール認証ロゴがあるものはいらない。(ない方が良い、の意)」と言われ、驚いたことがあります。そもそも中東では、輸入品も含めて国に存在する食品は基本的に全てハラールとなり、認証マークなど不要という認識なのです。※ハラームのものを除く。
そのような事情から、ハラールマークがあることでかえって疑念を持たれかねないため外してほしいとのことでした。また、ハラールとして判断する上での科学的アプローチも東南アジアとは異なります。東南アジアでは使用原材料やコンタミを基準とした判断ですが、例えばUAEであれば仕様書とDNA検査でハラールを判定するというルールになるのです。
中東の小売店では日本の大手メーカーの食品や菓子が多数販売されていますが、彼らが定めたハラール認証プロセスでは、これらはハラールであるという解釈なのです。
東南アジアを主戦場にしている私からすると中東ルールは全くの別物という感覚です。実は2023年8月に3SKUほどのハラール認証マーク付き商品をUAEに輸出しましたので、後日市場からのフィードバックをこちらに追記します。
ハラール認証団体の選び方
実際にどの認証団体を選択すればいいのかという点ですが、企業の規模を問わずこの悩みは尽きません。マレーシアやシンガポールなどでは政府が運営するハラール認証団体は一つですのでこのような悩みは存在しませんが、日本では多くのNPO団体がハラール認証を提供しているので、”どれか一つを選ぶ”必要があるのです。
この悩みについては、私自身が実際に日本ハラール認証を取得し、マレーシアをはじめとする東南アジアのムスリム諸国に輸出する中で得た経験や知見を元に説明します。
認証団体を決めるポイント
結論から申し上げると、「認証を取って何をしたいのか?」という最初の入口であり同時にゴールでもある点を第一に考え、取得するべき認証団体を決めることがベストです。大半の方は輸出を目的にした認証取得と想像しますが、具体的な対象国はどこでしょうか?
先述の通り、マレーシアではJAKIMとの相互認証を認められたものがオフィシャルでハラール商品として認められている、という背景があります。マレーシアで販売を目指すのであれば、JAKIMが相互認証先として認めた7団体のどれかを選ぶ必要があります。
インドネシアの認証に関して質問されることもありますが、現状でははっきりしたことは見えていません。政治的なパフォーマンスもありえますが、「MUI(インドネシアハラル)が認めたもの以外は販売できない」というアナウンスが行われた経緯もあります。しかしながら弊社は現在インドネシアにて、相互認証を有していない団体の認証を得ている商品を現地に輸出していますので、しばらくは今後の状況を注視していきます。
認証費用は?
ハラール認証取得にかかる費用に関しては、各団体が独自の費用を設定していますので各団体に問い合わせする必要があります。弊社が属している認証団体では、SKUに限りなく一定料金で認証維持が可能という特徴がありますが、他の団体では少数のSKUであれば格安で対応できるなど、各団体によります。
弊社では、2団体を対象とした認証取得の事前相談や取得サポートを提供しています。ぜひ気軽にお問い合わせください。
国内限定で販売したい場合は?
「賞味期限の都合上、輸出は難しいのでインバウンド市場を狙っていきたい。」というメーカーもあるでしょう。このような企業でも海外の認証団体と相互認証を締結する日本ハラール認証は必要なのでしょうか?
国内限定で販売したい場合は、ムスリムフレンドリー認証でも十分に通用します。先述の通り、訪日するムスリムは日本で純ハラールのものが少ないことを理解しています。また、海外でもノーポーク・ノーラードというスタンスのレストランの多く、これらも人によっては選択肢の一つというのが彼らの基準です。
ハラール認証があれば、海外認証団体と相互認証がないものでも何の問題もなく通用します。相互認証ではなくてもマークがあるとないとでは大きな差にはなりますので、今後インバウンド市場を開拓したい場合もハラール認証を取得するメリットは十分にあると言えるでしょう。(ムスリムフレンドリーのロゴも十分通用します。)
弊社では、原宿・竹下通り横のHIS原宿観光案内所にて日本ハラール土産コーナーを運営しています。このスペースでのテスト販売はいつでも実施が可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。2023年の5月より販売しており、ムスリム観光客の間で話題を集め最大60個/日の販売点数や、なんと数万円単位で購入される方もいます。テストの場として最適ですのでぜひお試しいただきたいです。
まとめ
今回の記事では、日本で取得したハラール認証は東南アジアで通用するか?について説明しました。マレーシアでは過去のハラール偽装問題の影響もあり、国内外のハラール商品信頼性向上のための管理が厳しくなりつつあります。
マレーシアに輸出を目指す場合、JAKIMと相互認証を結ぶ団体で認証を取得しない限りハラールとして認められない、ということは何度もお伝えした通り。まずは御社でどのような事業を展開していくかを考えていただき、逆算思考で認証取得の是非や適切な認証団体の選択を検討されることをおすすめします。
弊社では、ハラール認証取得に関する相談や認証取得サービスを”認証取得をして東南アジアで販売してきた実績”を元に”メーカー視点で”サポートしますので、ぜひお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。