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マレーシアのコンビニ事情|食品のプロ視点で徹底解説

日本と同様に食のインフラとして重要な、マレーシアのコンビニエンスストア(コンビニ)。日本のように徒歩圏内にどこでもあるというほどではないですが、ショッピングモールや主要駅、ロードサイドのガソリンスタンドには必ずコンビニを見つけることができます。

そんなマレーシアのコンビニですが、実はローカルブランドだけではなく日系や韓国系企業も参入していることをご存じでしょうか?そして、日本と同じくマレーシアでもコンビニ各社が火花を散らし、マーケットシェア拡大もひと筋縄にはいきません。

今回は、そんなマレーシアのコンビニ事情を食品事業者視点で解説します。

ローカル系コンビニエンスストア

まずはマレーシアのローカル系コンビニ企業について紹介します。

MyNEWS.com

主に駅構内やショッピングモールで展開されている「MyNEWS.com」(マイニュース)。2023年時点で600店舗以上展開している、マレーシアではおなじみのコンビニです。

利便性の良い場所に展開していることが最大の特徴。その利便性ゆえに、私自身も通勤や買い物中についつい寄ってしまいます。

ミドル層以上を顧客ターゲットとした品ぞろえで、若干ですが日本から輸入した商品を販売していることも特徴です。また、オリジナルブランド「MARU CAFE」はおにぎりやパン、ケーキなどのスイーツも展開していておいしいと評判です。

99 SPEED MART

先ほどのMyNEWS.comと比べると、よりローカル向けな「99 SPEED MART」(99スピードマート)。ローカルが多く住むエリアのショップロットなどでよく見かけます。

ローカルの人たちにとっては、お菓子や飲料などのほかお米などの食料品や日用品も買えることから、小さなスーパーマーケットというイメージで日々の買い物の場として重宝されています。

日用品もローカルブランドが主流であることや価格訴求の商品が多いことからも、ローカルに特化したコンビニと言えるでしょう。

KK SUPER MART

ローカルが多く住むエリアのショップロットなどでよく見かけるコンビニ「KK SUPER MART」(KKスーパーマート)。先ほどの99 SPEED MARTとターゲット層などはほぼ同じとなり、競合と言っても過言ではないでしょう。

食料品や日用品がメインの販売となり、店舗面積に比べて商品数がとても豊富。そのため、スーパーまで行かずに生活必需品が買えてとても便利とローカルの評価を得ています。

マレーシアでは日本と異なり24時間営業体制を採用しないコンビニが多い中、 このKK SUPER MARTは24時間営業で他のコンビニと差別化をしているため、スーパーが閉まっている時などに非常に便利と評判です。

韓国系コンビニエンスストア

次に、外資系コンビニとしてマレーシアで勢力を伸ばしている韓国系コンビニの二社をご紹介します。

CU

2020年にマレーシア1号店をオープンした「CU」(シーユー)。韓国のコンビニチェーン店です。1号店をオープンした後、冒頭で紹介したMyNEWS.comの会社とライセンス契約を結んだことでも話題となりました。

外観や店内などのスタイリッシュなイメージも若者の支持を得ていて、1日あたりの売り上げはマレーシア内のコンビニ業界トップという噂もあるほどです。今一番勢いに乗っているコンビニと言えるでしょう。

気になる取り扱い商品ですが、半分以上が韓国の商品でカップ麺や冷凍食品を筆頭に、ホットミールはキンパやトッポギなどの人気の韓国料理も取りそろえ、もちろん多くの商品がハラールに対応しています。

emart24

マレーシアで最新のコンビニとして最近オープンが続いている「emart24」(イーマート24)。

韓国では非常にメジャーなチェーン企業で、食料品から日用品、そしておもちゃなど何でもそろう店として知られていますが、マレーシアでの展開はどちらかというとコンビニとしての位置づけでの商品展開。

韓国のスナック菓子や飲料などはもちろん、韓国料理のホットミールから美容製品に至るまで多彩な商品がそろっています。

カフェメニューのようなデザートが充実していることも特徴。韓国の美容製品やおしゃれなデザートがあることで、女性の集客にもつながりそうです。

日系コンビニエンスストア

お待たせしました。最後は日系コンビニ、二社の紹介です。

7-ELEVEN

日本でもおなじみの「7-ELEVEN」(7イレブン)。2023年時点で、マレーシアにあるコンビニチェーン店の中では最大店舗数(2,500店舗以上)を展開しています。

マレーシアの現地法人が運営しているため商品の品ぞろえは日本とは異なり、ローカル市場を意識した展開で当然ハラール商品が主体です。

ホットミールもマレーシアらしいパンダンリーフを使用した肉まんや、スパイシーな具が入ったおにぎりなど、ローカルの好みに寄せたラインナップ。日本の7-ELEVENとは全く異なる雰囲気ではあるものの、外国のコンビニとして十分に楽しめる品ぞろえです。

Family Mart

日本で全国展開している「Family Mart」(ファミリーマート)。

7-ELEVENと同じく現地法人が運営していますが、店内の雰囲気は日本の店舗と非常に似ていることが特徴です。

おにぎりやお弁当などの食品は日本の品ぞろえとは異なるものの、ローカル製造商品でもパッケージに日本語表記を積極的に取り入れていることなどから、他のコンビニとは異なる日本路線で差別化している点が目立ちます。

スナックやアイスクリームなどの商品は日本とローカルの商品が半々となり、日本のFamily Mart店舗でよく目にするプライベート商品も少しですが取り扱いがあります。

また、Family Martのハラール対応への取り組みについては後ほど詳しく取り上げますが、ローカル製造のプライベート商品についてはローカルニーズに応え、全てハラール対応となっています。

マレーシアのコンビニとハラール認証について

マレーシアで人気のコンビニチェーンをご紹介しましたが、ではコンビニとハラール認証の関係についても見てみましょう。

マレーシアは人口の64%がイスラム教徒のマレー系マレーシア人で占められています。それゆえ、ハラール対応が事業を推進していく上で重要なポイントであり、事業にある程度の規模を求めていく際はハラール対応を避けて通ることはできません。

特にローカル市場をターゲットにしたコンビニに関しては、ほぼ全ての商品がハラールに対応していると言っても過言ではないでしょう。その一方でFamily Martを代表とするような、クアラルンプールの中心で日系や外国人需要も狙う小売店ではごく一部ですがハラールではない日本製商品も販売されています。

しかしながら弁当やおにぎり、デザートに関してはマレーシアの現地法人が管理する工場で製造され各社ハラールに対応していることからも、中食に対するハラール対応の重要性を知ることができます。

実際にマレーシアに進出している日系メーカーもコンビニの中食向けに多くの食材を販売し、当然ながらハラール商材であることが条件となっています。

Family Mart&ファミカフェの取り組み

今回取り上げているコンビニチェーンの中にはアルコール飲料の販売をしている店舗も多く、たとえばMyNEWS.comでは手軽にビールなどを購入ができますが、それとは反対の路線を進む例をご紹介しましょう。

マレーシアのFamily Martを展開するQL Resources Bhd(QLリソーシーズ)はFamily Mart全店舗でのハラール認証取得を目指し、現在マレーシア全土の約360店舗でアルコール飲料の販売を休止しています。

このアルコール飲料の販売停止についての経緯ですが、Family Martにはホットスナックやソフトクリーム、ドリンクなどを店内でいただける「ファミカフェ」と呼ばれるイートインスペースがあり、このファミカフェが2023年にJAKIM(マレーシア・イスラム開発庁)のハラール認証を取得したマレーシア初のコンビニカフェとなりました。

そして、今後はファミカフェのみならずマレーシア全土に360店舗以上あるFamily Martも2025年までをめどに段階的にハラール認証取得していくことを目指すため、アルコール飲料についてこのような措置を取っています。

アルコール飲料の販売を中止するということを日本に置き換えた場合、業績に大きな影響があるのでは?と懸念される方もいらっしゃるでしょう。しかしながらマレーシアの場合は人口の64%が飲酒をしないイスラム教徒のため、アルコール関連商品の販売停止が業績に与える影響は小さく、それ以外のさまざまな食品の販路を拡大していくことでさらなる売上拡大を目指せるという事情があります。

このFamily Martのハラールへの取り組みは、日本の企業が今後マレーシアに進出する際の一つの事例ともなり、さらにはハラール認証への理解を深めることにもつながりそうです。

まとめ

今回は、マレーシアのコンビニエンスストア事情について食品事業者視点で解説をしました。

マレーシアには多くのコンビニチェーンがあり、最近では韓国系コンビニの参入、そして日系のコンビニもハラール認証取得を目指すことでこの地で成功の道を歩んでいることがお分かりいただけたでしょう。

人口の大半を占めるイスラム教徒の胃袋をつかむことでイスラム教徒からの商品への信頼や企業のイメージ・ブランド価値の向上につながり、その結果売り上げにも反映されるため、ハラール対応はコンビニ展開でも重要な要素なのです。

そんな競争が激しいマレーシアのコンビニ市場では、各社の取り組みも毎日のように進化しています。百聞は一見にしかずですので、ぜひマレーシア市場でのコンビニの今を自身の目と足、そして舌で感じていただければ幸いです。

弊社では、現地で5年間食品事業を展開した中で得た情報やネットワークを駆使した、オリジナルの食品市場視察プランを提供しています。詳細はこちらからご確認ください。

今回の記事を参考にしていただき、現地のコンビニを訪問される中でハラール対応の重要性についての理解が深まることを願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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