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バラエティ豊かな南国マレーシアのドリンク | 激甘から健康志向まで

一年を通して気温が高い南国マレーシア。涼をとるためにマレーシアの人たちはさまざまなドリンクを飲んでいます。日本でもよく目にするようなドリンクもあれば異国ならではの珍しいものもあり、マレーシアを訪れた日本人は皆さん、飲み物ひとつを取っても所変わればいろいろという印象を持つでしょう。

そこで今回は、マレーシアの飲み物事情に注目。定番ドリンクから、今マレーシアで人気急上昇のドリンクスタンドブランドなどをご紹介します。

マレーシアの飲み物事情

イスラム教徒が国民の約65%を占めるマレーシア。その影響からお酒を飲む層の割合が少ないこと、そして南国ということで水分補給の機会が多いこともあり、非常に多彩な飲み物文化が発展をしてきました。

その最も代表的な文化が、コーヒー(Kopi/コピ)や紅茶(Teh/テー)を楽しむお茶文化。これはかつてマレーシアを長く統治していた国にイギリスが含まれることも大きく影響しています。イギリス統治下のマレーシアでは紅茶の葉の栽培が根付いたと同時に、彼らが楽しんでいたアフタヌンティーを始めとする紅茶を楽しむ文化が浸透。マレーシアの人たちが日常的に紅茶をいただく文化が定着しました。コーヒー文化も同じくこの時期に定着しましたが、コーヒーも紅茶も独自の作り方・飲み方で進化をし、そこからまた若い人たちが中心となる新しいカフェ文化に発展する今につながっていますが、これについては後ほどご説明します。

先述のお茶以外にも南国の気候を生かした多彩なドリンクが楽しめることも、マレーシアの魅力のひとつ。種類の豊富さはもちろんのこと、その気候ゆえからかサイズも日本と比べるとビッグサイズがスタンダードなことも特徴として挙げられ、子供から大人まで大きなカップを片手に休日を楽しむ光景もよく見られます。

脈々と続いてきている南国マレーシアならではの飲み物文化は、それを提供する場所、そして飲める環境についても日本と異なります。クアラルンプールのような都会はもちろんですが、地方の小さな町であっても、人々が手軽に冷たいドリンクを買ったりひと息つきながら喉を潤せる店やドリンクスタンドが非常に豊富で、安価から比較的高価格な飲み物までお店もとにかく充実しています。マレーシアでは、食べ物にはありつけなくても飲み物であれば入手は容易、そして種類も豊富という点が大きな特徴と言えるでしょう。

激甘から健康ドリンクまで~マレーシアならではのドリンク

では、そんなドリンク天国とも言えるマレーシアでどのような飲み物が飲まれているのか、代表的なものを中心にご紹介しましょう。

コピやテーなどローカルドリンク

冒頭でも簡単にご紹介したマレーシアを代表するドリンク、コピ(Kopi)とテー(Teh)。

実はコーヒー豆が採れるマレーシア。18~19世紀頃から人々の間でコーヒー文化が根付いたと言われています。マレーシアではコーヒーをコピ(Kopi)と呼びますが、そのコーヒーは日本人が知る一般的なコーヒーとは異なります。

観光地として人気の町、ペラ州のイポー。ここを発祥とするホワイトコーヒーと呼ばれるコーヒーは、焙煎方法が非常にユニーク。なんと、焙煎の際にマーガリンを加えることで風味と香ばしさをプラスします。マレーシアではこの方法で焙煎されたコピがコーヒーとしてはメジャー。この豆で淹れた濃いコーヒーに砂糖やコンデンスミルクなどの甘さをたっぷりと加えていただくスタイルが主流です。

そしてマレー語でテー(Teh)と呼ばれる紅茶もコピと並ぶ人々に人気の定番ドリンク。紅茶そのものは、いわゆる世界各地で飲まれている紅茶と変わりありませんが、マレーシアならではの紅茶ドリンクとして押さえておきたい定番メニューがテー・タリッ(Teh Tarik)と呼ばれるミルクティーです。

マレーシアの飲食店ならば大小関わらず絶対ある、と言っても過言ではない必須ドリンク、テー・タリッは紅茶にコンデンスミルクをたっぷりと加え、それを混ぜる過程で二つの容器を使って数回交互に上から落とします。上に引っ張りながら容器に落とす動作を表すマレー語「Tarik」が名称となるドリンクで、グラスにサーブされる際は表面にたっぷりと泡が乗っていることも特徴。マレーシアの人たちは民族を問わずこのテー・タリッが大好きで、ホットでもアイスでも人気のドリンクです。

ここでご紹介したコピとテーは、マレーシアのコピティアムと呼ばれるローカルカフェで楽しまれています。このコピティアムは古くからマレーシアの人たちに親しまれていて、お茶を飲むだけではない彼らの憩いの場となっているのです。

正体は何?ピンクや赤ドリンク

マレーシアでは、日本人の感覚からすると信じられないようなカラーが料理に登場することもしばしば。そして、それは飲み物も例外ではありません。

マレーシアを訪れた方が驚くドリンク、それが鮮やかなピンクや赤色の飲み物です。その色の正体は、ほんのりバラの香りがする濃縮されたローズシロップ。

ローズシロップを炭酸やお水で割った赤色の飲み物はシロップジュースと呼ばれ、そのカラーからマレー系の結婚式などお祝いの場での飲みものとしても登場しますし、ローカル度の高いお店や屋台などでも日常的に目にする飲み物です。甘さはあるもののバラの香りはほんのりとする程度で、不思議な味わいです。

そして日本人であればさらに驚く方が多い飲み物が、どぎついピンク色のバンドゥンジュースです。先ほどのローズシロップにコンデンスミルクを加えることで、カラー、そしてその味もスイートなドリンクに変身。とても派手なそのピンク色は最初こそ驚きますが、常夏マレーシアの強烈な日差しの下では意外となじんでしまうドリンクでもあります。

フレッシュフルーツジュース

一年を通しておいしいフルーツが豊富なマレーシアだからこそ楽しめる飲み物が、フレッシュフルーツジュースです。果物の屋台などでも手軽に絞ってジュースを作ってくれたり、飲食店でもメニューは豊富。マンゴーやスイカ、ドラゴンフルーツやパイナップルなどのフレッシュジュースが日本と比べると安価にいただけます。ただし、気を付けたい点は追加される砂糖やシロップの量。飲食店でもドリンクスタンドでもかなりの量の甘さを加えることが一般的ですので、フルーツそのままの味を楽しみたい場合はオーダーの際にノーシュガーと伝えることが必須です。

また、マレーシアの至るところで買えるココナッツジュースもおすすめです。道端でココナッツの実を割って提供する風景もよく見られ、マレーシア人にとっては水と同じ感覚でいただく水分補給ドリンクとも言われています。

へルシー重視のバーリーやチャイニーズティー

ここまで読んで、甘くない飲み物はないのか?と感じた方もいらっしゃるでしょう。マレーシアで甘くないドリンクが欲しい場合には中国茶がおすすめです。マレー系のお店でもメニューにチャイニーズティーとあることも少なくなく、あっさりとしたノーシュガーのお茶が出てきますし、中華系のお店であればさらに鉄観音茶やジャスミン茶など種類も楽しめます。

また、バーリーと呼ばれる大麦を煮出した甘酒のような見た目のドリンクもマレーシアではよく見かけます。少し砂糖が加えられてほんのりとした甘みはありますが、体内の老廃物を排出すると言われ健康を気にしている方がよく頼んでいる飲み物でもあります。底に沈んだ大麦をスプーンですくって食べるのが好き!という方も多いマレーシアならではの健康ドリンクです。

「tealive」や「CHAGEE」などチェーン系ドリンクブランド

一年を通して気温が高いマレーシアでは通勤途中などに手軽に買うことができるドリンクスタンドがとても充実していて、都会から地方都市まで、さまざまチェーン系のドリンクスタンドが展開されています。ブランドそれぞれターゲットや商品展開に違いはあるのですが、今回は2ブランドをご紹介しましょう。

高級モールからサービスエリアまで至るところで目にするのが、「tealive」。マレーシア国内で250店舗以上展開していると言われる誰もが知るドリンクスタンドブランドです。マレーシア人が好むミルクティーをベースにした甘いドリンクや、タピオカやクリームなどのトッピング種類も豊富。その他にもコーヒーやお茶をベースにしたアレンジドリンクもあり、メニューが多く頻繁に買っても飽きないことも人気の理由。常に行列になっている店舗も珍しくありません。

そしてもうひとつご紹介するブランドは、健康志向が強まっている中華系に特に人気を得ている「CHAGEE」。中国茶をアレンジしたメニューを中心に展開し、甘さも控えめでノーシュガーを好む層に支持されて店舗展開を加速させています。中国生まれのブランドですが、マレーシアの進出については2023年にハラール認証を取得。国民の半数以上を占めるマレー系顧客も取り入れるべく、マレーシア仕様に合わせたブランド展開も行っています。

この二つのブランドに限らず、マレーシアのドリンクスタンドブランドに共通して言えることは、カップのサイズが大きく飲みごたえがある量で提供されること、甘さや氷のレベルを選べること。そしてだいたいの場合はカップの蓋をしっかりと密閉してくれることです。蓋がしっかりと密閉されることで大きなサイズを購入しても移動にも耐えられ、時間をかけて飲み干すことができるスタイルが好まれています。

マレーシアで急速に発展するカフェ文化&コーヒーの浸透

先述でマレーシアのコピティアムでコピを楽しむ昔からのコーヒー文化をご紹介しましたが、近年ではマレーシアで支持を集めているコーヒー、そしてカフェ市場に大きな変化が見られます。

すでにご説明した通り、マレーシアでは飲み物全般において甘さが加えられ、それはコーヒーも例外ではありませんでした。ところが、この数年で一気に、エスプレッソやドリップで淹れた甘くないブラックコーヒーをいただけるお店が急増。アラビカ種の豆にこだわり、質の高いコーヒーやカフェラテを好む層が徐々に増えています。

そして、美味しいコーヒーをいただく環境として同時に発展しているのがカフェ文化。都会から地方都市まで、マレーシアはカフェ天国と言っても過言ではないくらいその数は増えています。美味しいコーヒーをいただけることはもちろんですが、雰囲気や広々とした空間など居心地が良い店が多く、新しい店から古い建物をリノベした情緒ある店まで多種多様なカフェ文化がマレーシアの飲食文化の中に根付き始めています。

また、このマレーシアのコーヒー&カフェ文化開花に合わせて海外からの進出も新たなステージに。2023年にはモロッコ発祥の高級コーヒーブランド「Bacha Coffee」がマレーシアに上陸し、すでに2号店もオープンするなど勢いを加速させています。

健康志向高まる。マレーシア人の甘味への意識変化

最後に、マレーシアの人たちの健康に焦点を当てて飲み物についての現状を少しお話しします。

実は糖尿病や心臓疾患など深刻な健康被害が問題になっているマレーシア。その理由は決してひとつではありませんが、やはり食生活に大きく起因する点は否めません。南国の暑い気候ゆえに油を多用するメニューが多いこと、そして食べ物と飲み物への砂糖の過剰摂取も指摘されています。

これに危機感を抱いた政府からの呼びかけもあってか近年では人々の健康意識に変化も出始め、マレーシアの人たちに根付いていた「飲み物は甘いもの」という価値観も変わりつつあります。飲み物の種類を問わず無糖やレスシュガーが好まれたり、その選択ができる店も増え始めています。

とは言え、それでも微糖と言われて出された飲み物が日本人の味覚からすると十分甘いレベルである、というケースはまだまだ多いマレーシア。長く培われた味覚の習慣を変えることは難しく、健康を害すことのない甘さのレベルが浸透するには時間もかかることでしょう。

まとめ

今回は、南国マレーシアのさまざまな飲み物、そしてマレーシアのカフェ市場の現状などをご紹介しました。

強い日差し、そして日本と比べると緩やかな時間の流れを感じるマレーシアでは一人でも誰かとでもお茶をともにする時間が多くなります。ぜひ、シーンに合わせて日本では味わえない雰囲気と味を楽しんでみてください。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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