コラム記事
3.152024
【マレーシア基本情報】移住/出張する前に知っておきたい文化や習慣の知識
当サイトにアクセスしていただいている方の多くは、理由はいろいろとは言えマレーシアに興味がある、マレーシアに行ったことがあるという方が大半ではないでしょうか。
マレーシアについての基本的な情報は既にご存じの方もいらっしゃるでしょうが、今一度改めて、基本情報を復習してみましょう。せっかくですので、豆知識も補足しながら振り返り、マレーシアを訪問する際に外国人であってもぜひ意識したいマナーや心構えもピックアップします。
文化面も含めてこれも大事な「基本情報」ですので、ぜひご一読いただければ嬉しいです。
目次
面積
330,000 km²
日本の約0.9倍の国土を持つマレーシア。マレー半島とボルネオ島の二つに分かれ、首都のあるマレー半島側は面積の40%ほどを占めています。マレー半島に11州、ボルネオ島にサラワク州とサバ州の2州があり、その他にマレー語でWilayah Persekutuanと呼ばれる連邦直轄領として首都クアラルンプール、行政都市プトラジャヤ、租税回避地として知られるラブアン島の3カ所があります。
また、多数の島がありますが個々の島の面積はそれほど大きくはありません。有名どころのペナン島は295km²、ランカウイ島は380km² で、日本の島々と比較すると、面積が近いペナン島と西表島(289.62km²)を並べるとイメージが湧きやすいでしょうか。
マレーシアでボルネオ島を除く最大の島は、ボルネオ島のフィリピン側海域にあるバンギ島(Pulau Banggi)の440.7km²で、それでも日本の種子島くらいの大きさに留まっています。
首都
Kuala Lumpur/クアラルンプール
もともとは錫採掘拠点として19世紀頃から発展してきた都市で、現在の人口は約195万人(2022年)。マラヤ連邦時代からの首都です。
現在、行政首都機能は郊外のプトラジャヤに移行しつつありますが、政府はクアラルンプールにお隣のセランゴール州を加えた地域を「グレーター・クアラルンプール圏」として総合的な拡大開発を続けています。
「Kuala/クアラ」はマレー語で河口や川の合流地点を表す言葉のため、クアラと名のつく地名はマレーシア中に非常に多く見られます。「Lumpur/ルンプール」は泥・泥水・泥の川の意味。したがって、「泥の川の交わるところ」が原義です。
クアラルンプールの中でも歴史のあるエリア、マスジッド・ジャメ(モスク)のある辺りがクアラルンプール発祥の地と言われ、クラン川とゴンバック川という二本の川がまさに交わっています。マレーシアに限らず熱帯地域の川は泥や砂が溶け込み濁りがちですが、ここでも両河川はしっかり濁っています。
この付近は近年整備も進み、歴史を紹介する案内板も立てられています。滞在中に一度訪れてみるのもいいでしょう。
人口
約3,350万人
※2023年マレーシア統計局による数字
2021年の統計での比較ですが、1km²あたりの人口密度は日本の336人に対しマレーシアは99人です。
民族構成は、マレー系約70%・中華系約23%・インド系約7%。
国が定めている「マレー系」を示す場合、オラン・アスリと呼ばれるマレー半島の先住民族とやボルネオ島の人口の半数以上を占める先住民族諸族も含まれます。サバ州のカダザン・ドゥスン族やサラワク州のダヤク族・ビダユ族をはじめとしたボルネオ諸族は、公的にオラン・アサルと総称されています。(憲法上定義されるマレー系マレーシア人については後述します。)
古くは鄭和の大遠征時代、近代ではスズ鉱山やゴムのプランテーションの労働者として中国大陸南部諸地方から渡ってきた多くの移民をルーツに持つ中華系マレーシア人の割合も決して小さくはありません。そして同じくイギリスの植民地であったインドからも多くの移民が行われ、現在のインド系マレーシア人のルーツとなっています。
言語
国語はマレー語(Bahasa Melayu)
オーストロネシア語族に属し、方言はあるもののマレーシア国内全般で話されています。国歌「NEGARAKU」も、もちろんマレー語です。
マレー語はインドネシア語との共通点が多く、マレーシア人とインドネシア人は日常会話程度ならだいたい通じ合えると言われていますが、日常の重要語では異なる単語も多いため、その違いもあらかじめ理解した上で会話が成立しているそうです。日本の方言同士と関係性は似ているかもしれません。
なお、マレー語にはアラビア文字を借用し改変した「ジャウィ文字」があります。古くは14世紀と推定される碑文が残っており、イギリスの植民地支配下でアルファベットが一般化するまで使われていました。マレー系人口の多い、マレー半島北部に位置するクランタン州では今でもジャウィ文字が併記された看板を多く見かけます。
華人社会では、先述の通り中国大陸南部のさまざまな地域からの移民を祖先とする人々が多いため、ルーツ別に方言地図が描けるほど多様です。首都クアラルンプール周辺は広東語話者が多く、ペナン島は福建語話者が多い等、さまざまな言語に触れることができます。
中華系の言語を含めた文化を知りたい方はぜひ、こちらのコラムを参考にしてください。
そして、英語の存在感も大きいマレーシア。イギリスの植民地だった歴史的背景からイギリス英語は習慣として広く使用され、初等教育からの英語教育も一般的です。多民族国家にとって、共通語としての英語の果たしてきた役割は大きいと言えるでしょう。
珍しい連邦立憲君主制の政治体制
マレーシアは立憲君主制の国家ですが、少し変わった体制を持つ国でもあります。
マレーシアには「王様」と呼ばれる君主が存在しますが、他国のように一つの王族が国家の君主を代々継承というものではなく、ユニークな制度とともに存在する君主という点に特徴があります。
マレーシア13州のうち9州にイスラム教の君主であるスルタンがおり、その9名のスルタンの互選によって国王にあたる、Yang di-Pertuan Agong/ヤン・ディプルトゥアン・アゴン、略して「アゴン」が選ばれます。任期は5年と決まっており、5年ごとにスルタンの互選が繰り返される交代制という、何ともユニークな制度なのです。
アゴンは在位期間中は象徴的な国王として、主に儀礼的な役割を果たします。一方実質の政治は議会が担い、行政権は首相および内閣により行使される議会制民主主義国家となっています。
またマレーシアは連邦制で、連邦の議会・政府と最高法規としての連邦憲法と法令があり、13の州でもそれぞれの議会・政府と州憲法・法令を持っています。全国共通の祝日の他に、州が独自に定める祝日もあります。州のスルタンや州知事の誕生日に加え、州それぞれの記念日や祭日もあるなど、ユニークな自治性を物語っています。
宗教と文化
国教はイスラム教
多民族国家マレーシアでは宗教の自由は憲法で保証されているため、一つの集落にイスラム教のモスク、中華系の道教の廟、ヒンドゥー教寺院が共存することは当たり前の風景です。
しかしながら、憲法ではイスラム教を国教(連邦の宗教)と規定しています。
国教のイスラム教を信仰する国民の割合についてですが、人口の70%を占めるマレー系の大半がこれに属します。憲法では「マレー系マレーシア人」は「イスラム教を信仰し、習慣上マレー語を話し、マレーの慣習(アダット)に従う人々」と定義されています。とは言え非イスラム教徒である先住民族はこれには該当しませんが、それでも全国民の半分以上の64%がイスラム教徒と言われています。
イスラム教が国教の国で覚えておきたいマナーとタブー
イスラム教が国教のマレーシアに日本人が滞在する場合、例えば空港やホテル、移動中や食事の場面なども含め最も多く接する可能性が高いのは、やはり母数が多いイスラム教徒のマレー系マレーシア人と言えるでしょう。
マレーシアを訪問する際には、外国人である私たちも敬意を持って認識しておきたい教義や習慣があります。多民族国家のマレーシアではイスラム教徒も異教徒の隣人を持ち生まれ育つため、異教徒や外国人が異なる慣習を持つことを理解している人が大半ですが、だからと言って、何をしても許されるということではありません。
ハラールフードとは?気をつけたい「食」のルール
イスラム教では豚肉とお酒の摂取は禁じられています。それは単に相手に「食べさせない」だけにとどまりません。時として「見せない」「触らせない」配慮も必要です。
だいぶ昔の話ですが、クアラルンプールのあるホテルで日本人旅行者が日本から持ってきたレトルト食品を調理室で温めてもらったところ、豚肉が含まれていたことが判明。使用した電子レンジと調理器具すべてを弁償することになったという話がマレーシア在住の日本人の間で有名でした。それくらい、扱う食材には注意を払うことが必要な場合があるのです。
では、豚肉以外の肉はまったく制約がなく自由に食せるのでしょうか。実は鶏肉や牛肉も、イスラムの訓えに則った決められた特定の方法で食肉処理され、適切に加工、調理される必要があります。全てにおいてイスラム法に則った適切な過程を経た食品が、ハラールフードです。
ハラールフードについては弊社のコラムにて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
ちょっとした行動や作法にも気配りを
日本では普通にしている行動にも、マレーシアでは失礼になるケースもありますので、いくつかご紹介しましょう。
・左手は不浄の手とされていますので、握手はもちろんのこと物の受け渡しも右手を使いましょう。
・人差し指での指差しは失礼にあたります。指し示す必要がある時は親指を使います。
・頭は神聖な部分とされています。これはマレーシアに限らず、東南アジアの多くの国で見られる価値観ですので、むやみに子供の頭を撫でるなどの行為は避けましょう。(家族などで親交が深まった場合などはこれに当たらないケースもあります。)
イスラムにまつわるTPOいろいろ
イスラム教ではお祈りの時間が定められていますので、移動や仕事などの最中であっても中座をする必要があり、マレーシアではそれは一般的な行動として認知されています。また、年に一度、イスラム暦のラマダン月には約一カ月間断食の時期を過ごします。その間彼らは日の出から日没まで、水も食事も口にできません。異教徒はもちろんいつも通り生活できますが、彼らの習慣を尊重し邪魔をしないように心がけることが大切です。
ご存じの方も多いでしょうが、イスラム教では女性の肌の露出を控えることが推奨されます。世界には女性が目以外の全身を覆い体の線を出せない国もありますし、男性の半袖・短パンが許されない国もあります。
マレーシアは多民族が暮らす国ということもあってか比較的寛容と言われていますが、外国人でも服装は時と場所をわきまえることが必要です。特にマレー系の方の集まりやお宅に招かれる場合などは、いつもより露出の少ない服装を選ぶことが無難ですし、相手への敬意を示すことにもつながります。
マレー系住民が多くイスラム教徒の割合が高いマレー半島のクランタン州では、スーパーのレジでさえも男性と女性で分かれているところがあります。また、男性はイスラム教の女性へ自分から握手を求めてはいけません。親しみを示したくともスキンシップはご法度という点を念頭に置き、自分の価値観が絶対と思わず注意を払いましょう。
まとめ
今回は知っているようで案外見過ごされがちな豆知識、そして訪問する際に気をつけたいことまで、マレーシアに滞在する際に知っておくと役立つ基本情報をご紹介しました。
多民族国家ならではの多様な文化や習慣を楽しめることが魅力のマレーシアですが、それは各民族間の理解により成り立っているものでもあります。外国人旅行者であっても訪れる国へ敬意を持ち、現地で出会う方々の心を傷つけたりすることのないようにしたいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【引用元】 外務省 マレーシア基礎データ