コラム記事
2.162024
マレーシアの麺文化|バラエティ豊かな麺料理を楽しめる国
多彩な魅力満載なマレーシアの食文化。多民族、そして多信仰が共存している文化のため、さまざまなメニューが楽しめることは過去にもご紹介してきました。
今回は、そのマレーシアの数あるご飯の中から麺文化に着目。マレーシアの麺文化の特徴や知っておくとオーダーの際に戸惑わない!という知識も少しご紹介します。
目次
【バラエティ豊かな麺天国マレーシア】
日本人がラーメンやそば、パスタなどさまざまな麺を食生活で楽しんでいるのと同じく、マレーシアにもたくさんの麺料理があります。一般的に麺はMee(ミー)と呼ばれ、さまざまなメニューが展開されています。レストラン街やフードコートにもローカルフードからウェスタンまで麺料理のお店は非常に多く、マレーシア人たちは非常に麺が好きな国民である、と言えるでしょう。
例えば、王道ではミーゴレン(Mee Goreng)、チャークイティオ(炒粿條/Char kway teow)、ラクサ(Laksa)、ホッケンミー(福建麺/Hokkien Mee)、カリーミー(Curry Mee)などなど。これらはほんの一部ではありますが、マレーシアで暮らしている人なら日常的に食べることも多いメニューです。
日本のそばやうどんにも温かい汁麺、そしてざるそばなどのように麺つゆにつけていただくタイプがありますが、マレーシアでもスープ麺、そして具と麺を和えていただくドライ麺があります。暑い気候ということもあってか麺を炒めるタイプやあんかけ麺のメニューも豊富。もちろん、麺そのものやスープの素材も多岐に渡ります。
民族ごとに好む麺料理もさまざま、そしてその食べ方も非常に多彩で、麺文化ひとつを取っても多民族を感じることができるのがマレーシア。そのメニュー全てをご紹介することは難しいですが、せっかくですのでここからはその代表的かつ知っておくと損はない、代表的な麺メニューをご紹介します。
【七変化するマレーシアのご当地麺いろいろ】
日本でも地域が変わるとスープや麺などのスタイルが変わるご当地ラーメンがあるのと同様に、マレーシアでも地域によってそれらが変化する麺料理があります。
・Laksa(ラクサ)/地域によってスープも麺も様変わり
故郷のラクサこそがラクサ!と主張するマレーシア人もいるほど、州や地域によって味や見た目がガラリと変わるのが、このラクサです。
ラクサとしてメニュー名になっているものを挙げてみます。Asam Laksa(アッサムラクサ)、Nyonya Laksa(ニョニャラクサ)、Curry Laksa(カリーラクサ)、Sarawak Laksa(サラワクラクサ)、Johor Laksa(ジョホールラクサ)、Laksam(ラクサム)。さあ、あなたはどのラクサを食べたことがありますか?
マレーシアを知ったばかりの人にとって最もメジャーかつインパクトのあるラクサは、観光地としても人気のペナン島で食べられているアッサムラクサ、別名ペナンラクサ。丸太のもちっとした米麺とアジなどの青魚でつくるドロッとした酢味と辛さが特徴のスープ麺です。
酸味と辛さ、とさらっと書きましたが、このスープはなかなか特徴のある魚介由来の香りを発するため、最初はその漂ってくる独特の香りゆえ食べる前にめげてしまう外国人も多いのです。ただ、実際に食べてみると魚介の出汁と酸味が非常にマッチし、つるんとした米麺との相性も抜群です。
そして、日本人が最も好きな味として挙げることも多い、ニョニャラクサ。プラナカン文化が根付いているマラッカやペナンでいただけるラクサです。スープのベースはココナッツカレー味ですが、ハーブを多用して煮込んだスープと黄色い卵麺を合わせるスープ麺で、そのまろやかで食べやすい味わいが外国人にもマレーシア人にも人気の理由。
言ってみればマレーシアの麺料理代表格でもあるラクサ。スープも麺も組み合わせは幾通りにもなり、七変化していくことが特徴です。南のある町で食べたラクサが美味しかったからと、北に移動してラクサを頼んだら全く違うスープ麺が出てきた、なんてことはよくある話です。ぜひ、マレーシアの地方都市を訪れた際はご当地ラクサに挑戦してみてはいかがでしょうか。
・ホッケンミー(福建麺/Hokkien Mee)/地域で色が変わる麺
そして、もう一つの七変化麺料理はこちら。地域でその色と見た目が変わるホッケンミ―です。
マレーシアの首都クアラルンプールを訪れた方がそこでホッケンミ―を注文すると、うどんのような太麺が濃茶色のソースで和えられた焼うどんのようなひと皿がやってきます。これがクアラルンプールやセランゴール州の人たちがホッケンミ―と呼ぶもの。濃い味に見える黒に近い茶色い仕上がりですが、薄味のたまり醤油がベースとなっていて思ったよりはあっさりとして食べやすいです。
そしてクアラルンプールから場所を移し、観光地ペナン島へ移動。先日食べたあの茶色いホッケンミ―がまた食べたいと、ここペナン島でそれを頼んでみたら。なんと赤い見た目のスープ麺が登場します。そう、ペナン島でのホッケンミ―は赤いのです。
ペナン島のホッケンミ―は別名Prawn Mee(蝦麺/プロウンミー)と呼ばれ、エビ出汁が効いたスパイシーな赤いスープに、黄色い卵麺とビーフンの二種類の麺をミックスするのが一般的。これはクアラルンプールのそれとは全く違い、知らずに頼んだ人はオーダーミスではないかと思ってしまうこともあるでしょう。それぞれの土地の出身者たちは時折、「ホッケンミ―と言ったら黒だ、赤だ」の討論を繰り広げているとかいないとか。
そして最後は少し番外編ですが、マレーシアのお隣の国シンガポールで出てくるホッケンミ―も少しご紹介。
黒、赤ときて今度は何色かというと、なんと白色です。シンガポールではホッケンミ―と言えば、白。米粉麺と卵麺の二種類の麺をエビや豚肉の出汁で煮込む、少し汁気が多い焼きそばのような料理です。マレーシアとシンガポールはお隣の国ということ、そしてその歴史的背景からも似た文化圏であることから両国を行き来する人も多いのですが、双方で頼むホッケンミ―がこれだけ違うカラーで出てくることに驚きを隠せない方も多いようです。
【自分好みの麺料理を楽しめるマレーシア】
さて、先述にて時折登場していた「二種類の麺をミックス」という技。不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、マレーシアの麺文化ではこのような提供方法はごく一般的です。
ここからは、マレーシアの麺文化の自由度の高さについてご説明します。
多彩なマレーシアの麺文化は、麺の種類も豊富。麺やミーと言っても、小麦粉麺、米麺、卵麺、ビーフン、揚げたカリカリ麺などいろいろ。麺の形状も、細麺、太麺、平打ち麺、ちぎり麺、そしてロール状のものなどこちらもまたバラエティ豊かです。
例えばアッサムラクサには丸い米麺が一般的、という基本的なラインはあるのですが、その定番に縛られないのがマレーシアの麺文化。麺を変えることでスープが違った絡み方になって味が変化するなど、カスタマイズして麺料理を楽しむスタイルがあるのです。
レストランや屋台で注文をする際、お店の方から「麺は小麦粉麺、卵麺、どれにしますか?」と聞いてきてくれるシーンに遭遇することもあるでしょう。その際はぜひ、お店の方におすすめはどんなミックスですか?と聞いてみると、美味しい食べ方を教えてくれたり、おすすめの麺のミックススタイルを伝授してくれるはずです。
もちろんこのスープに合う麺はこちらとか、この麺同士は絡みにくくて相性が悪い、などそれぞれの意見もあるのですが、基本的にはオーダーする本人が好きなスタイルでオリジナル麺をカスタマイズできることが、マレーシアの麺文化の自由さと魅力。幾通りも試してみてお気に入りのスタイルを見つけてみるのもいいですね。
【日本の麺文化も浸透しているマレーシアの麺食事情】
ご説明してきた通り、マレーシアに浸透している麺料理を楽しむ文化。民族を問わず麺料理に抵抗がないマレーシア人たちは日本のうどんやそば、ラーメンへの興味も高く、麺料理を提供する日系の外食チェーンが進出しやすい国であると言えるでしょう。
例えば、先日クアラルンプールにオープンをした高級モール「The Exchange TRX」の百貨店SEIBU内に「宮武讃岐うどん」が出店。2019年にマレーシア進出を果たした同店は外国人駐在員が多く暮らす町モントキアラでも人気のお店で、日本と変わらない美味しいうどんがいただけると話題になっています。
マレーシアでは健康志向の上昇も相まって、特に中華系の間では日本のうどんやそばの人気が高まっています。もともと麺料理を頻繁に食べる食文化から抵抗がなく食べる客層が多いこと、そして日本と同じ本格的な味が評判となり、連日盛況です。ハラール認証は取得していませんが、うどんやその副菜は材料として豚肉の使用を避けることが容易ですので、ポークフリーというスタンスでイスラム教徒の取り込みも目指しています。
また、こちらのコラムでは日本の麺文化の代表とも言えるラーメンについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
このように、マレーシアの麺文化は日本の食文化との親和性も高く、ビジネスにつなげていきやすいベースがあるということがお分かりいただけたでしょう。
【まとめ】
今回は、マレーシアの多彩な麺文化についてご紹介しました。
マレーシアで暮らし始めた日本人や外国人の方とお話をすると、「マレーシアに住んでから麺をよく食べるようになりました。」という声をよく耳にします。これは、マレーシアの各地で手軽に麺料理が食べられること、そして多彩で美味しい麺料理が豊富であることの現れではないでしょうか。 ぜひ、マレーシアでご自分のお気に入り麺料理を見つけてみてください。最後までお読みいただきありがとうございました。