コラム記事
2.92024
ハラール市場参入は現地生産がポイント?現地日系メーカーの成功事例から学ぶ、目指すべき今後の方向性
弊社のブログを読まれている方は、これから日本でハラール認証取得を検討している、もしくは日本でハラール認証取得を完了しこれから海外に輸出することを想定している、場合が多いでしょう。
私自身はこの4年間マレーシアとシンガポール、ブルネイ、そしてインドネシアで日本製造ハラール認証商品の輸出販売を継続しています。しかしながら、さまざまな要因から日本国内でビジネスを行うような売上を作ることが難しい、という課題を痛感しています。
そのような当地の環境で現地に進出している日系メーカーの多くは現地生産商品で現地販路にしっかり入り込み、マレーシアを起点に東南アジア周辺国に積極的に輸出している企業も多く見られます。大手企業が多いことは事実ですが、方法次第では中小企業であっても極力リスクや投資をコントロールした上で実現も可能となることをご存じですか?
今回の記事では、ハラール認証取得を目指すもしくは取得済みのメーカーが、今後海外でのビジネスを拡大する上で現地生産を視野に入れた展開が有効な理由をマレーシアでの事例を元に解説します。
目次
ローカル販路開拓
下記で詳しくご説明しますが、日本食の輸出は現地小売店の棚では「日本食コーナー」のみでの展開が一般的です。そして、日本食コーナーを有する小売店は残念ながら多くないという現実があります。その観点からもローカル販路への導入が売上拡大のポイントになるのです。
当然ですがマレーシアにも多くの食品メーカーがあり、ローカル商社帳合で多くの小売店で日本食が販売されています。日系企業でローカル製造している企業はこのような商流で事業を拡大しているのです。
日本製造→日本食コーナーのみの展開
先述した通り、日本から輸入される商品はほぼ全て「日本食コーナー」のみで展開されます。マレーシアには小売向けの日本食輸入に特化する商社が数社あり、その数社が日本食を販売するマレーシアの小売店の日本食コーナーを管理しています。
それ故、日本からの輸出商品で小売向けに特化した商品は販路が非常に限定されてしまう現状があります。日本食を扱う主力小売店はクアラルンプールを中心に展開する5社がメインとなり、ビジネスの面から見ても輸出ベースでは売上の限界があることも事実です。
しかしながら、カゴメのように日本から輸入しているにも関わらず日配カテゴリーに強いローカル商社と協業することで数多くのローカル小売店にも導入。ローカル価格を実現させている成功例もあります。
ローカル価格の実現
「ハラールマークがあれば売れる」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながらそのような事実は全くありません。
商品自体に需要があることが大前提ですが、特にマレーシアやインドネシアでは「価格」も重要なファクターです。日本製造商品は輸入品ということもあって現地では「高級品」という扱いを受けています。
現地の売り場を視察すると分かりますが、日本食を扱うようないわゆる高級小売店とローカルをターゲットとする小売店で扱われる商品の売価レンジには大きく差があります。多くの方にヒアリングした中では、やはりRM10(約300円)以下の売価ゾーンがローカル販路に参入する上で重要という印象を受けました。
輸入品でも需要がある商品は絶対売価として高額でも売れていますが、実は日本人駐在員やその家族の調理需要がある商品(例:味噌)という事実も忘れてはなりません。ハラール認証があるから現地のムスリムが購入するというロジックではなく、ハラールマークがあるので現地で誰でも購入の対象にはなる。しかしながらその商品にニーズを感じる購入者が対象になる、というイメージが適切です。
OEMによる市場参入
では参入に際しどう切り込むことが良いのでしょうか。それは、「現地メーカーに製造委託販売」、つまりOEMです。ローカル販路に参入する日系企業が、OEMによって市場参入を実現している事例があることをご存じですか?
熊本の浜田醤油さんは現地のソースメーカーでOEM製造した商品を販売しています。(ブランド名貸付によるロイヤリティービジネスかもしれません。) 高級小売店を中心に展開されていますが、最近ではローカルの一般店でも見かける機会が増えてきました。また他事業とのコラボ(アイスクリーム屋)などで積極的に露出を増やしています。
また、有名ブランドでは「Dydo Malaysia」が炭酸飲料「Vida」ブランドをOEMにてローカル販路で展開しています。それだけではなく、東南アジア諸国への輸出も成功している点からも、ローカル製造による価格競争力は販路拡大に重要なファクターであると言えるでしょう。
弊社でもローカルのアイスクリームメーカーと日本スペック商品開発に着手しており、日系飲食店を中心にローカル店(ムスリムオーナーの飲食店)にも業務卸を開始しました。日本製造のアイスクリームは高級小売店で販売はされていますが、それらはハラルではないため現地飲食店での販売はリスクがあることから拡販は見込めません。
ローカル企業から弊社にOEMのビジネスマッチング依頼が数社来ており、そのうちの一社は「缶食メーカー(オイルサーディンや煮込みチキンなど)」です。ご興味のある日本のメーカー様はメールにてご連絡ください。
インドネシアハラールとの相互認証
近年話題(悩み?)になっているインドネシア(BPJPH)とのハラール相互認証の件も、今後日本からインドネシアに向けてハラール認証商品輸出を目指す上で非常に重要なポイントです。
先日BPJPHが発表した各国におけるハラール認証団体との相互認証ですが、日本からは2団体(JIT/JMA)のみが現状「インドネシアでハラールとして認められる」という発表がありました。従って、この2団体以外のハラール認証団体のハラール認証は現地で公的にハラールとしては認められません。
日本ハラール認証取得を今後検討している企業は、今後のインドネシア市場参入を考えるとこの2団体で申請することが好ましいです。
マレーシアでOEMにて対応する製品であればJAKIM認証なのでその心配は不要です。しかしながら、インドネシアへの輸出はBPOM登録(国への商品申請登録)に多大な時間を要しますので(弊社では2年)、インドネシア輸出を検討される場合は気長に構えることをおすすめします。
注意点:現地法人設立の必要性
OEM元が製造から販売まで対応する契約であれば一気通貫で効率的ですが、現実では現地法人を立ち上げて卸販売していくことが一般的です。食品とは異なりますが、ある医療関連の日系メーカーは現地法人を立ち上げて日本から輸入、そして現地の問屋に卸販売しています。OEM先は「買い手」ありきですので、OEMを検討される際はまず商流を確認することをおすすめします。
朗報:シンガポール市場における日本ハラールの可能性
弊社の関連企業である「Rich Spoon Pte. Ltd.」では現在、シンガポールへの日本ハラール認証商品の卸販売をスタートさせました。MUJI SingaporeのPlaza Singapura店でハラールコーナーを展開していますが、ローカルムスリムを中心としてシンガポール人に非常に好評です。
シンガポールの中でも特に集客力とブランド力のある小売店となるMUJIで日本のハラール商品をコーナーとして展開していますが、売価はヨーロッパやアメリカ基準に近いラインと見受けられます。販売は非常に好調で毎月100ケース以上の数量を納品している状況。
シンガポールは人口の約2割がイスラム教徒とのことですが、彼らから「日本製のハラール商品が手に入らない」という悩みの声が弊社のSNSに多く届いていることからも、現地で需要があることは確信していました。
賞味期限が最低半年以上あるものなら、定番採用を視野に入れた上で試験販売としてテストマーケティングを実施することも可能です。お気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回のコラムでは現地OEMの有効性について解説しました。日本製造ハラール商品の輸出拡大は可能ですが、マーケット拡大となると価格の点で課題が多いことは事実です。
現地で販路を広げるためにはやはりローカル価格でローカル販路に入り込む方法が正攻法ですので、今後海外ビジネス拡大を検討される企業様はOEMの可能性を事前に模索されることをおすすめします。またその際には、現地法人(卸販売)の立ち上げが必要になる可能性が高い点にもご注意ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。