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マレーシアの主食とは|マレーシアの食生活とコメの関わり徹底解剖

東南アジアに位置する国マレーシア。皆さんは、マレーシアの食事と聞いた時にどのようなご飯をイメージしますか?常夏の国で日本とは気候や文化も異なることから、どのようなご飯が主食として食べられているのか実はあまりよく知らない、という声もよく耳にします。

そこで今回はマレーシアの主食に着目。マレーシアでメインとなる食事や日本との関わりなどについて、解説します。

マレーシアで民族問わず食される主食コメ

マレーシアで最も食べられている主食となるもの、それはコメです。そう、日本と同じくマレーシアはコメを主食とする食文化を持つ国なのです。

多民族国家マレーシアには主にマレー系、中華系、インド系の三民族、その他にも多数の民族が暮らしていますが、その民族混在から生まれた豊かな食文化はマレーシアの魅力のひとつにもなっています。

そしてその多様な民族や文化が入り乱れる中でも、コメは民族を超えて食べられているトップの食材。最も多く流通しているのはパラッとして粘りの少ないインディカ種です。もちろん、麺やパンなどの粉物の主食も人気ではありますが、やはりコメには到底及ばずというシェアになっています。

マレーシアという国を広く旅してみると気が付きますが、あちこちで水田を目にし稲作が盛んであることが分かります。そして、お店や食卓を見ても確かにコメを使用した料理が非常に多いです。

マレーシアでの一人当たりのコメの年間消費量は日本を上回ると言われています。ただし、この消費量については日本ならではの事情もあり、水分を多く含む日本のコメの場合は一度に消費できる量が限られること、そして超少子高齢化が進む日本では食欲が旺盛な若年層が少ないため平均年齢が若い国よりはどうしても消費が下回る、といった点が挙げられます。

そのような事情があるとは言え、マレーシアの約3.8倍の人口となる日本が消費量で下回るほどマレーシアではコメがよく食べられている、ということには驚きを隠せません。

ご飯にもおやつにも!変化球もあるコメの存在感

では実際、マレーシアで主食となるお米はどのような食べ方をされているのでしょうか。代表的なものから少し変わり種まで見てみます。

マレー系/ナシチャンプルやクトゥパッ

国民の約70%を占めるマレー系。彼らは白いご飯にカレーやグレービーをかけていただく食スタイルを好みます。ビュッフェのように料理が並べられた中から好きなカレーや野菜などのおかずを乗せ、混ぜていただくナシ・チャンプル(Nasi Campur)と呼ばれるスタイルのお店も非常に多く、このような店では白米が大量に消費されています。

また、肉料理サテー(Satay)やルンダン(Rendang)などに合わせるお餅のように固めたクトゥパ(Ketupat)など、お米のアレンジ料理も豊富です。

ちなみに最初にご紹介したナシ・チャンプルスタイルのお店は、中華系になるとエコノミーライス(経済飯/Economy Rice)、インド系ではナシ・カンダー(Nasi Kandar)と少しずつ料理内容、そして名称を変えながら登場します。つまり、ここでもコメが大量に消費されているということです。

中華系/肉骨茶ヤムライスやクレイポット

もともとコメ食文化がある中国大陸からの食文化も受け継いでいるマレーシアの中華系。そのため中華系の料理にはコメがよく登場します。

例えば代表料理となる肉骨茶(バクテー/Bak kut the)にはご飯は必須となり、白米の他にヤムライスと呼ばれるタロイモの炊き込みご飯もよく食べられています。また、クレイポットライスと呼ばれるいわゆる土鍋ご飯も非常に人気。鶏肉や牡蠣など豊富な具材とともにご飯を炊き上げ、仕上げに醤油をベースとしたソースで味付けをするため中華系はもちろんのこと日本人や外国人にもファンが多い料理です。

インド系/バナナリーフカリーやビリヤニ

インド系のコメ料理と言えば、カレーに合わせる白米やビリヤニです。バナナリーフカリーのお店では毎日大量の白米が炊かれ、各テーブルに敷かれたバナナリーフの上にどんどん白米が盛られていく光景も日常的。

またインド系の炊き込みご飯とも言われるビリヤニもマレーシアでは非常に人気で、インド系に限らずマレー系や中華系も好んでいただくことで知られています。

インド系のお店で提供される料理で使われるコメの多くは、タイ米やバスマティ米。細長い形状で水分量が少ないことから粘り気もなくサラサラと食べ進められてしまうため、食べすぎに注意が必要です。

アレンジ料理/クイティオやラクサ麺、タパイ、ボルネオのコメ酒など

最後は、コメから作られている料理のアレンジ版をいくつかご紹介します。

マレーシアでは麺料理も非常に人気ですが、コメを原料とする麺を使った料理もあります。代表的なところでは、幅広い米麺をエビや卵とともにオイスターソースで炒めたチャークイティオ(炒粿條/Char kway teow)。そしてマレーシアのご当地ラーメンとも呼ばれるラクサ(Laksa)は麺やスープが地方ごとに変幻自在となるのですが、主にペナン島で食べられているアッサムラクサには弾力のある食感が特徴となるコメの麺が使われています。

白米はメインの食事に限らずスイーツやお酒にも使われています。日本人には甘酒の味にも感じられるデザート、タパイ(Tapai)。酵母菌でもち米(プルッ/Pulut)を発酵させたお酒の味のようにも感じられるデザートなのですが、イスラム教徒であるマレー系の人たちが好んで食べるものです。もちろんお酒ではありませんので、食べることは何ら問題ありません。

そして、ボルネオ島のサバ州やサラワク州の先住民発祥のお酒にはコメを発酵させて作った、いわゆるどぶろく酒も色々とあります。

ざっとご紹介しただけでもこのように、マレーシアの食とコメは密接に関わりがあることがお分かりいただけたでしょう。

進出企業続々。日本食人気で増える日本米を楽しむ層

コメを主食とするマレーシアですので、白米を使用した日本のおにぎりやお寿司はもちろん人気です。そして、最近ではクアラルンプールやセランゴール州などの首都圏にレベルの高い日本食店も続々オープンしていて、日本人に限らず多くのマレーシア人が定食などで日本のお米をお茶碗からいただく光景も見られます。

マレーシアと日本のお米は違うのか?という素朴な疑問を持つ方もいるでしょう。食べてみるとその違いはよく分かりますが、コメに含まれる水分量が違うため粘り気に大きく差が出ます。マレーシアのお米はパラパラとしていてカレーなどの汁物がよく絡みやすい食感、そして日本米はしっかり噛む必要がある粘り気がある食感です。

少し前までのマレーシア人は、日本米の水分が多いゆえの粘り感を好まない方も多かったのです。しかしながらマレーシアの経済成長などの影響、そして日本食がいただけるレストランやファミリーマート、イオンのような日本の食スタイルを提供するチェーン店の進出も著しいことで美味しい日本米のいただき方も浸透しつつあるようです。合わせる料理によって日本米が選ばれるシーンも増えてきていますので、今後日本食でのマレーシア進出を検討している方はコメでの商機はまだ幅広いと考えて良いでしょう。

とは言え、日本で生産された純粋な日本米を当地に持って来るにはそれ相応のコストがかかるため、エンドユーザーへの販売価格もかなり高価になります。そこで多くのローカルレストランやコンビニチェーンなどで使われているのが、いわゆるジャポニカ米と呼ばれるコメです。日本で生産されているものではありませんが、短い円形の米粒の形状、そして炊いた際の粘りやツヤは日本米と酷似することから、マレーシアに限らず日本米の代用として広く行き渡っています。

日本食を提供するレストランでも価格が比較的安価と感じる場合は、このジャポニカ米を使用している可能性が高いと言えるでしょう。一方、中~高価格メニュー、そしてオーナーが日本人もしくは強いこだわりを持つマレーシア人などの場合は日本から運んだ日本米を使用していることが多いです。

この厳密なる日本米で順調にビジネスを広げているのが、クアラルンプールのモントキアラやKLCCに店舗を構える鈴木商店です。日本人が多く暮らすモントキアラをターゲットに日本米を販売しており、駐在員の多くはこの鈴木商店で日本米を購入しています。ローカル米やジャポニカ米よりも値が張ることは事実ですが、お米の味は譲れない文化が根強い日本人のニーズをしっかりとつかんで固定ファンを獲得。2023年11月にクアラルンプール中心部に新オープンしたモール「The Exchange TRX」内の百貨店SEIBUに新店舗を出店するなど、順調に運営をしています。

輸入米依存のマレーシアコメ市場

コメが主食であるマレーシア。最後にマレーシアのコメ市場の事情についても少し触れてみます。

マレーシアのコメ自給率は2021年発表のデータで約70%となっており、主食と言いながらも外国からの輸入米に依存をしている現状があります。

マレーシアのコメ輸入市場は政府系企業のパディブラス・ナショナル社(Padiberas Nasional Berhad/通称:BERNAS)がその窓口として一社独占の権利が与えられ、外国米の輸入を希望する企業がBERNASに希望のコメ銘柄を指定して輸入代行してもらう、という流れです。

現在マレーシアでのコメの流通は基本的には自由化されていますが、農業省による卸売や輸入のライセンスを得る、そして輸入許可申請も必要です。 そして先述した通りBERNASが、買付から物流まで主導権を握っていますし、輸入に関する総量もマレーシア政府が定めるものがありますので、外国の一企業が独断でビジネスをできる場ではないことは知っておく必要があります。

まとめ

今回の記事では、マレーシアの主食コメに着目しました。

民族を超えて広く親しまれている白米食文化をご紹介するとともに、コメ消費大国でありながらも自給率の点で問題を抱えていることについてもお分かりいただけたでしょう。

これだけコメに親しんでいる食文化が浸透しているマレーシアでゆっくりと市民権を得ている日本米についても、今後まだまだビジネスチャンスが得られる可能性があることもご紹介しました。今回の記事が新しいビジネスのヒントになれば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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