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マレーシアのラーメン事情 | KLラーメン激戦区に本格日本ラーメン店続々オープン

東南アジアを訪れると、日本のラーメン人気に驚く方も多いでしょう。そしてここマレーシアでも例外なくラーメンは人気で、インスタントから本格的な日本の味そのままのレベルの高いラーメンを楽しめる場が増えています。

今回の記事ではそんなマレーシアの日本ラーメン事情、そして今後ラーメンを商材としてマレーシアでビジネスを検討する方に参考となる現地情報もお届けします。

麺大国マレーシアのラーメン事情

マレーシアでの日本のラーメン事情をお伝えする前に、まずは簡単にマレーシアの麺文化浸透度について知っておきましょう。

ラーメン好きな方が多い日本と同様に、実はスープタイプの麺料理好きが多いマレーシア。マレー系、中華系、インド系の三民族を筆頭とする多民族が混在する国マレーシアですが、わりとどの民族の食文化にもスープ麺料理が存在しています。

例えば、マレー系ならスープにパンチのあるアッサムラクサやカリーミー、中華系はきしめんのような幅広い麺を使用したパンミーやあっさり味のワンタンミー、といった具合に日常的にスープ麺を食す文化が根付いています。

そんなマレーシアの食文化背景もあってか日本のラーメンが人々の間に根付いており、今や町のあちこちに日本スタイルのラーメンを楽しむ店が見られます。後ほど詳しく説明しますが、クアラルンプールやその周辺の郊外都市では日本の味と遜色がないレベルの美味しさを提供する店が続々とオープンしています。

その一方で、日本のラーメンを基準にはしているもののローカルの好む味やスタイルに寄せてローカルナイズされた、「Ramen」と呼ばれるものも浸透しています。日本人の視点のみで見るとこれをラーメンと呼ぶのかは正直微妙なものもあるのですが、ローカルの間ではしっかりと根付き、民族を問わず楽しむジャンルの食文化として成長していることは確かです。

マレーシアのインスタントラーメン

マレーシアではインスタントラーメンの需要も非常に高く、その種類もかなり豊富です。その人気を象徴する一例とも言えるスーパーのインスタントラーメン売り場の眺めは非常に圧巻ですので、マレーシアを訪れたら必ず見ていただきたい光景の一つです。

インスタントラーメンとひとことに言っても種類も特徴も様々ですので、代表的なものを挙げてみましょう。

日系ブランド

スーパーなどでも目にする日本のインスタントラーメン。目にする頻度が最も多く、そして信頼を得ている代表はやはり日清。マレーシアに限らず世界に名をはせているブランドですね。日系と紹介してはいますが、ここマレーシアではハラールであることが求められること、そして製造コストを抑えられることもあり、インドネシアやタイ製造の商品が多く売られています。

そして、最近では日本からマレーシアに輸出されている人気のインスタントラーメンもあります。東京に4店舗、大阪に1店舗を構えているハラールのラーメンチェーン店「麺屋帆のる」のインスタント製品です。クアラルンプールのドン・キホーテではこの麺屋帆のるのインスタントラーメンが販売されおり、あっさりとした鶏白湯スープはマレーシア人の嗜好に合わせて、ノーマルとスパイシータイプの二種類を用意。クオリティが高いインスタント麺として広い層で受け入れられています。

なお、ノンハラールのインスタントラーメンもエリアや店舗によって需要はあり、日本や他国からの輸入された商品も多数棚に並んでいます。ただし、輸入品となるため価格は高めとなっています。

韓国ブランド

韓国ブランドのインタントラーメンも非常に人気です。日本でもコンビニエンスストアなどで定番商品として見かける「辛ラーメン」は、ここマレーシアでも人気。支持を得ている理由は、スパイシーな味を好むマレーシア人の嗜好にマッチしていること、そしてハラール認証を取得している、という点が挙げられます。

この辛ラーメンに限らず、韓国のインスタントラーメンはハラール認証を取得している商品が多く見られ、この点では日本商品よりも市場での存在感があります。韓国のハラール市場は同じ非イスラム圏の日本と比べて進んでいる実態があり、マレーシアなどのイスラム圏では信頼を得ているとも感じます。

ローカルブランド

ローカルブランドのインスタントラーメンは商品数が非常に多く、味や特徴も様々。味はあっさりからスパイシーまでとバラエティに富んでいますが、やはり日本と比べるとスパイシーではっきりとした味のものが棚の多くを占めています。

一般的には5食で1パックという販売形態で売られていますが、まだまだ大家族が多いマレーシアですので、スーパーなどではこの1パックの商品を何パックも購入している光景は珍しくありません。

そんな数ある商品の中で人気を得ているのが、MyKuali社製造の「ペナンホワイトカレーヌードル」。お土産としても人気の商品ですので、目にしたことがある方も多いかもしれません。マレーシア人が好むココナッツミルクを使用したコクのある味わいが特徴で、常に好調な売れ行きです。

日本の味と遜色なし!日本のラーメン店続々進出

では、ここからはマレーシアで完全なる日本のラーメンで勝負すべく日本から進出しているお店に着目してみます。

ここ数年、クアラルンプールを中心に目立つ日本ラーメン店の進出。現在はクアラルンプールとその近隣のセランゴール州に20店舗程度の出店が確認されており、日本でも名の知れたラーメン店の出店が目立っています。

日本のラーメンのメインと言えば、やはり豚骨を使用したスープが一般的。マレーシアは国民の約65%がイスラム教徒、さらには約6%となるインド系のヒンドゥー教徒も豚肉を食べないため、国民全体の約70%がターゲットから外れる、という現状を考慮してこの店舗数を見てみると、なかなか優秀な数字と言えるでしょう。

豚骨スープについて少し触れましたが、実はマレーシアの実店舗ラーメン界にもハラール/ノンハラールの住み分けがあります。まずはラーメン界では多数となるノンハラール店の事情からご紹介します。

この数年で日本から進出しているノンハラールのラーメン店の立地は、比較的ハイブランドの出店率が高いショッピングモール内に目立っています。例えば、2022年オープンの「麺屋 天晴」は外国人が多く訪れる高価格帯モール「The Gardens」内のISETANに出店。そして先日は博多ラーメン「一幸舎」が、新オープンのモール「Pavilion Damansara Heights」内に出店しています。この立地はやはり、ノンハラール店への客層を見込むために外国人そして中華系が多く暮らす・訪れるエリアの選択が大きいです。

マレーシアに進出しているラーメン店のラーメン一杯の価格はだいたいRM30前後。現在マクドナルドのハンバーガー、ビックマックがRM14という価格と比較すると、日本のラーメン一杯のここでの価格感が伝わるでしょうか。

決して安いとは言えない日本のラーメンを求めて訪れる客層は、在住日本人はもちろんですが中華系や日本の味を求める外国人も多く、当然ながら味にもシビアな層です。そのためどの店舗もシェフを始めとしたスタッフに日本人を一定数は配置。材料や手法ともに手を抜かず、日本で支持された味そのままをマレーシアで再現する努力が見受けられます。

もちろん、マレーシア人の嗜好に合わせたスパイシーなラーメンなども一部メニューに取り入れるなどローカルに寄せる姿勢がありますが、味、さらには日本ならではの目の行き届いた店内の作りに至るまで妥協を許さず、日本スタイルを徹底することでリピーターを獲得しているようです。

レベルアップするハラールのラーメン店

ノンハラールのラーメン店が主流となるマレーシアで、ハラールのラーメン店はあるのでしょうか。そして美味しいのか否かについてもご説明します。

実際のところ、ほんの10年くらい前まではマレーシアのハラールラーメン店で日本と遜色がない味を提供できる店はほぼ皆無だった、という現実がありますが、この5年ほどでその事情は大きく変わり始めています。

ハラールラーメンで現在最も頭角を現しているのが、クアラルンプール郊外などに3店舗を構える「清六屋」。ハラール認証を取得している日系のラーメン店ですが日本人が経営をしていることもあり味へのこだわりは強く、非常にレベルの高い鶏白湯ラーメンがマレーシア人はもとより日本人からも支持を得ています。

また、清六屋以外にも「らーめん吉山商店」や「KAGURA Tokyo Chicken Ramen」など、日本人そしてマレーシア人にも人気のハラールの日本ラーメン店が数店舗あり、いずれも日本と変わらない味を提供しています。

レベルが高いと言ってもやはりハラールで豚骨不使用のため薄味なのではないか?と思われる方もいらっしゃるでしょう。先述した人気ハラールラーメン店で特筆すべきは、ハラールにこだわる必要のないノンムスリム層も一定数お客として来店しているという点です。すでにご紹介した通り、マレーシアでは圧倒的にノンハラールの日本ラーメン店が多く、ノンムスリムであればそちらに食べに行っても問題はありません。それをあえてハラール店を選んで来店するノンムスリム顧客がいる、という点から、レベルの高さを証明できていると言えるでしょう。

では、現在このような味をマレーシアで再現できて人気を得られているにも関わらず、これまでなぜマレーシアではハラールのラーメン店が遅れを取っていたのか。

これまでは生まれながらのムスリムは多くの場合、日本で暮らしたり旅行に出かけてもラーメンを食べることはなく終わっていました。なぜなら、日本にあるラーメン店のほとんどは多くの場合、豚骨が含まれるからです。そのため、美味しいラーメンの味を知る機会がなく、こちらで現地の人が見様見真似で作るローカルナイズされたハラールのラーメン(厳密にはラーメンもどき)を、こういう味なのだろうという視点で食べていたにすぎませんでした。そして、このような見様見真似のラーメンでは、当然ながら日本の本当のラーメンの味を知っているノンムスリム層には受け入れられるはずもなく。

ところが、だんだんと日本でもハラールに対する認知度が上がり始めたこと。そして腕の良い日本人シェフがハラール認証取得店で本格的なラーメンを提供する機会が増え、訪れたムスリムがその美味しさに目覚め始めた結果、マレーシアでも徐々に美味しいハラールのラーメンが認知され始めました。もちろん、マレーシアに進出しているハラールラーメン店が味に妥協を許さず努力していることも追い風となっています。

マレーシアの人口の65%にも及ぶイスラム教徒をユーザーとして取り込んでいけることは大きな商機と捉えることができますので、今後ハラールの美味しい日本ラーメン店は増えていくと予想されます。

まとめ

今回の記事では、マレーシアの日本のラーメン進出事情についてご紹介しました。

麺料理が好きな文化背景を持つマレーシア人にとって、日本のラーメンは非常に親しみやすい食文化であること、そして日本のラーメン店、とひとことに言ってもハラール/ノンハラールでその事情も変わることもお分かりいただけたでしょう。

今後ラーメンでマレーシア進出を検討される方のターゲット選定の参考になれば嬉しいです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

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