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イスラム教徒が6割を占めるマレーシアのお酒事情やマナーについて徹底解説

国民の約65%がイスラム教徒で構成されているマレーシア。イスラム教では、アルコールや豚肉の摂取が戒律に基づいて禁じられています。つまり、マレーシア国内では多くの人がお酒を摂取しないことが一般的なのです。そのような背景からも、「マレーシアではお酒は飲めないのか?」「お酒の持ち込みは可能なのか?」など疑問に思う方も少なくないでしょう。

今回の記事では、そんなマレーシアでお酒は飲めるのか、そしてどこで購入できるのか、などの基本的なことから、マレーシアでの宗教的な背景を理解した上でムスリムの方と食事をともにする際に留意すべきポイントまで、お酒に関する内容を解説します。

マレーシアでお酒は飲めるの?

イスラム教のハラール(イスラムの戒律で許されているもの)に対し、飲酒はハラーム(許されていない、禁忌とされているもの)のひとつです。そのような事情から国民の大多数がお酒を飲まないマレーシアですが、実際のところ、この国ででお酒は飲めるのでしょうか?

マレーシアでお酒は飲める!でも…

結論からお伝えしますと、マレーシアでお酒を飲むことは可能です。国全体で飲酒が禁止されているわけではなく、中華系やインド系などのイスラム教徒ではない国民は21歳を過ぎていれば飲酒が許可されていますので、彼らは日常的にお酒を楽しんでいます。

しかしながら、国民の大多数とも言える約65%を占めるイスラム教ではアルコールや豚肉の摂取が禁忌とされているため、お酒を提供するお店や購入できる場所が限られている、という事実には注意しなければなりません。また酒税が高いことから、販売価格が高く設定されています。

たとえばマレーシアの飲食店で最も目にするビール、カールスバーグはスーパーマーケットなどで購入すると、320ml缶が約RM8(約240円)程度。1缶200円前後の日本の350ml缶ビールと比較すると、マレーシアの方が高めの価格設定であることがお分かりいただけるでしょう。

お酒を購入できる場所は?

日本と同様、マレーシアでもコンビニエンスストアやスーパーマーケットなどでお酒を購入できます。しかし、マレーシアのスーパーマーケットには通常の売り場とは異なるノンハラールコーナーが設けられていて、そこでハラール(イスラム教の戒律に則っているもの)とされていない商品、つまりはお酒や豚肉の商品が販売されています。

このノンハラールコーナーはお店の少し奥まった場所に設けられていることが多く、お会計も別でノンハラールコーナーで行います。ただし、スーパーマーケットによっては、基本的なノンハラールの商品のお会計はノンハラールコーナーで済ませ、ビールだけは通常のレジで支払うように指示されることもありますので、それぞれのお店の指示に従うようにしましょう。また、フードデリバリーでお酒をオーダーすることは可能です。

お酒を専門的に取り扱うリカーショップもありますが、基本的には中華系やインド系などのスタッフとなり、マレー系のスタッフはいません。

日本からお酒は持ち込める?

日本からマレーシアへのお酒を持ち込む場合は、1リットル以内であれば可能です。現地では割高商品となるお酒ですので、日本から旅行でマレーシアを訪れてホテルの部屋などで少量を楽しむ場合には、自分で持ち込むのも良いかもしれません。ただし、この規定容量は順守しましょう。

マレー料理は味が濃いものが多く、実はお酒との相性抜群です。マレー料理のレストランでお酒を取り扱う店は少ないため現実にはなかなかできない組み合わせではありますが、マレー風焼き鳥と言われるサテーや香辛料を多用する料理など、思わずお酒が進んでしまうような料理がたくさんあります。

マレー料理をテイクアウトして、持参したお酒とともにホテルでゆっくり楽しむのもおすすめです。

ムスリムと食事をする際のマナー

多民族国家マレーシアの食文化は多様性に富んでいて、様々な料理を楽しめる点が魅力のひとつです。特にお酒は料理の味わいを引き立てたり、食事を華やかにする要素になる場合もあります。

ただし、ムスリムの方と一緒に食事をする場合にはお店選びや飲酒のマナーについて特別な注意が必要です。ここからは、ムスリムと食事をする際のマナーについて詳しく解説していきます。

ハラールとノーポークの違い

ムスリムの方と食事をする際の第一の注意点はお店選びです。豚が扱われていないことが前提となるため、ハラール認証を受けているお店、もしくは豚を取り扱わないポークフリーのお店などが選択肢になるでしょう。


ハラール認証とは、イスラム教の戒律に則っていること、製品やサービスがイスラムで禁じられているものを含んでいないことを示すものです。このハラール認証を得るには、ハラール認証機関による検査を受けて基準を満たしていると認められることが必要で、単にアルコールや豚を取り扱っていないという意味だけではなく、ムスリムの方が安心して利用できることを保証していることも意味します。

一方で、ポークフリーと呼ばれるお店は豚肉やラードを使用せず、ムスリムに配慮した取り組みを行うムスリムフレンドリーという位置づけです。店頭にノーポーク、ノーラード、ノーアルコールなどの表示がされていることが、それに当たります。

「ムスリム市場をターゲットにするのならハラール認証を取得すれば良いのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそう簡単な話ではないのが実情です。

ハラール認証取得には相当な労力(申請作業と書類管理)が必要になり、これらは数年単位での更新が必要です。またハラール認証を維持するためには顧問役的な認証コンサルタントを雇用し続ける必要もあるため、コストもかかるといった事情もあるのです。

そしてお酒を販売することで売上と利益が稼ぎやすいという背景もあり、ムスリム以外の華人やインド系の飲食店ではお酒を提供するが、しかしながらポークフリー、というスタンスを選択する飲食店が多いのも実情です。

このようなイスラム圏ならではの事情も理解した上で、次の項目ではどのようにお店を選ぶべきかを解説します。

お店選びのポイント

ムスリムの方との食事をしながらお酒もいただく、という場合はノーポークノーラードでハラール原材料を使った料理を提供するお店を選ぶなど、お店を選ぶ段階から配慮するようにしましょう。

アルコールを提供するお店であっても、SNSの投稿などにてムスリムの方の来店を確認できる店であれば、使用されている食材に関しては問題ない可能性が高いです。しかしながら、イスラム圏の国ということもあって周りの目を気にするムスリムの方もいますので十分な配慮が必要です。非ムスリムの視点で決めてしまうことは避け、事前に同行者に許可を得ることが大事です。

クアラルンプールにある「ビジャン バー&レストラン」は、日系企業がムスリムの方を接待する際に使うことで知られています。マレー料理のレストランでありながらワインなどのお酒も提供しているお店なので、マレー料理と一緒にお酒を楽しみたいという方にもおすすめです。

時折耳にすることですが、好意から日本文化を知ってほしいという一方的な押し付けで居酒屋に連れて行く、というのはNGですので気を付けてください。大多数の日系居酒屋は豚肉を提供していて、イスラム教徒にとってその豚は「不浄なもの」ですのでその点をお忘れなく。

大切なのは相手へのリスペクト

ムスリムの方と食事をともにする際に大切なことは、相手へのリスペクトです。ポークフリーだからと言って必ずしも安心して良いわけではありません。お酒の席への同席に対する考え方も人それぞれで同席を嫌がる方もいます。その判断もお店次第であったりすることもありますので、事前にムスリムの方の意思をしっかりと聞いて配慮するようにしましょう。

首都圏のクアラルンプールでは比較的緩やかな印象がありますが、ムスリムの方の中には「ハラール認証のお店にしか行かない」という方もいます。これらはポークフリーレストランでは使用されている食材に関して不安がある、という背景や信仰心が背景にあります。

お互いを気遣いリスペクトを持って選んだお店での食事は、心地よく楽しいひとときとなるでしょう。

まとめ


今回の記事では、マレーシアの基本的なお酒事情からムスリムの方との食事のポイントまで、お酒に関わることについて解説しました。

マレーシアではお酒を購入できる場所が限られていたり、提供していない店があるなど、日本と違う点が多くありますが、マレーシア国民の大部分を占めるイスラム教徒に配慮した行動をとることで、その国の文化や宗教へのリスペクトにもつながります。

ムスリムの方との文化や宗教の違いを理解しながら、お互いが気持ちよく楽しめる食事を心がけてみてください。最後までお読みいただきありがとうございました。

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