コラム記事
12.112023
食品メーカーのためのハラール認証取得ガイド:基礎から応用まで
ローバル市場での競争が激化する中、食品メーカーの経営者の皆さんは、新たな市場機会を模索していることでしょう。特に注目すべきは、急速に成長を続けるイスラム教徒の市場です。ここで重要な役割を果たすのが「ハラール認証」です。
この認証は、製品がイスラム法に基づいて製造され、宗教的に許容されることを保証し、世界中のムスリム消費者に安心と信頼を提供しています。ハラール認証を取得するには、どのようなプロセスが必要なのでしょうか?また、認証取得後、どのように市場戦略を展開すれば良いのでしょうか?
このコラムでは、ハラール認証の基本から取得プロセス、そして市場戦略までを分かりやすく解説します。食品業界で一歩先を行くための貴重な情報がここにあります。
目次
ハラール認証とは?-基本から理解する
ハラール認証は、イスラム教徒が食品を安心して消費できるように保証する基準です。
この認証は、製品がイスラム法(シャリーア)に基づいて製造されていることを示します。ハラール認証を受けた製品は、豚肉やアルコールなどイスラム教で禁止されている成分を含まず、清浄(タヤーブ)な環境で生産されていることが保証されています。
肉製品を例に上げてみましょう。ハラール認証を受けた肉製品は特定の方法で屠殺され、調理過程も厳格に管理されています。誰でも屠殺できるという訳ではなく、ムスリムによるルールに即した屠殺のみがハラールとして認められます。
ハラール認証には原材料や製造行程の管理という食品安全性と宗教的要件を満たすことが求められており、そうすることで世界中のムスリム消費者に安心と消費を提供することが可能になります。
認証に必要な食品安全基準
ハラール認証を取得するためには、特定の食品安全基準を満たす必要があります。
これらの基準は、製品が宗教的に許容されるだけでなく、消費者の健康と安全を保護することを目的としています。安全基準には、原材料の選定、製造過程での十分な衛生管理、そして製品の品質保持が含まれます。
ハラール認証取得は難しいのでは?と思う方が多いかもしれませんが決してそんなことはありません。食品安全マネジメントシステムに関する国際規格であるISO22000やFSSC22000を取得している食品メーカーであれば何の問題もなく認証プロセスを進めることができるでしょう。
認証取得におけるポイントとしては、原材料と製造行程の把握です。たしかに手間はかかりますが、一度経験すればフローは理解できますし、取り扱い商材次第では申請自体も非常にシンプルなのでまずは専門家に相談することをおすすめします。
ハラール市場のポテンシャル
ハラール認証取得は、世界的に急成長しているイスラム教徒市場にアクセスするための重要なステップです。現在、世界のイスラム教徒人口は約18億人と推定され、これは世界人口の約24%に相当します。特に中東や東南アジア、アフリカなど、人口成長率の高い地域に多く分布しており、その購買力は絶えず増大しています。
日系企業における成功事例を見ると、ハラール認証の重要性がより明確になります。例えば、日本のある大手食品メーカーは、ハラール認証を取得したことにより中東地域での販売を大幅に伸ばしました。別の日本のスナックメーカーは、ハラール認証取得後、マレーシアやインドネシアなどイスラム教徒が多い国々での市場シェアを拡大しています。
これらの事例から、ハラール認証がグローバル市場における日本企業の成長機会をいかに拓くかが見て取れます。ハラール市場は、今後も継続的に成長すると予想され、特に食品業界においては、新たな市場機会として注目されています。
しかしながら上記の成功事例は大手企業によるもので、東南アジアの製造拠点化による価格競争力が背景にある点を忘れてはいけません。全ての商品はハラール認証を取得したからと言って売れるというこは決してありません。
そんな中、日本ハラール認証を取得して東南アジア諸国への輸出に成功している企業もあります。中小メーカーであっても、大手と差別化したアプローチで商品力×価格が現地ニーズにマッチすれば輸出のチャンスがあるということを証明している事例です。
日系企業がこの機会を活用し、国際市場での競争力を高めるためには、ハラール認証の取得とそれに伴う適切な市場戦略の構築が不可欠です。このダイナミックな市場において、ハラール認証は、新たな顧客層を獲得し、ブランドの信頼を築くための鍵となります。
ハラール認証取得のプロセス-手順と必要な準備
ここではハラール認証取得のプロセスを簡単に説明します。日本には多くの団体がありそれぞれの手順があると思いますので、今回は弊社が認証を取得した団体の手順を紹介します。
まず、食品メーカーはハラール認証機関に取得申請を行います。その後、商品の仕様書や製造プロセスを認証機関に提出し、書面確認後に現地立会のもとでチェックを受けます。そこで問題があれば改善し、認証を受ける流れが一般的です。
現地立会の際には従業員へのハラール教育もあり、全社的にハラールについて学習する場もありました。ハラール認証を維持する上で、製品の製造と処理に関する詳細な文書化と管理も重要なポイントです。確かに手間はかかりますが、上述の通り国際食品規格を保持している企業にとっては問題なく管理することが可能ですし、当社のようなこれら世界規格を保持していない企業でも認証を維持しているのでご安心ください。
次に認証取得のかかる期間や更新期間に関して説明します。(初回)ハラール認証取得は相談から取得まで半年弱の時間がかかったと記憶しております。しかしながら、シンプルな商材を扱いの企業であればスムーズに行くと数週間で認証の取得も可能です。ちなみに更新時の所要時間は1ヶ月弱とスムーズに更新を受けております。
ハラール認証取得している日系企業の成功事例
日本企業の中でハラール認証を取得し、イスラム教徒市場で成功を収めている具体的な事例をいくつか挙げることができます。これらの事例は、ハラール市場のポテンシャルを活用し、国際的な成長を遂げた企業の実践を示しています。
- 味の素 – 味の素は、ハラール認証を取得した製品を通じて、イスラム圏でのビジネスを拡大しています。同社は、中東や東南アジアの国々において、調味料や加工食品の販売を成功させており、これらの地域でのブランド認知度を高めています。
- 日清食品 – 日清食品は、ハラール認証を受けたインスタントラーメン製品で、特に東南アジア市場において成功を収めています。ハラール認証を取得したことで、イスラム教徒の間でも安心して消費されるようになり、特にインドネシアやマレーシアでの売上が伸びています。
- キッコーマン – キッコーマンは、醤油製品においてハラール認証を取得し、中東や東南アジア市場での販売を促進しています。イスラム教徒の消費者にも受け入れられる製品として、ハラール認証は同社の国際的なブランドイメージを強化しています。
大手企業の成功事例は残念ながら中小企業にとって、あまり参考にならないというのが実情です。そんな中でも、日本国内でハラール認証を取得し海外への輸出を拡大し続けている数社を紹介します。
- 東亜食品工業 – 2016年にハラール認証を取得し、東南アジアのイスラム諸国のみならず、アメリカやヨーロッパへうどんと蕎麦を中心とする乾麺を輸出中。
- ひかり味噌 – 味噌メーカーでいち早くハラール認証を取得。マレーシアを始めとする東南アジアの小売店では定番採用を拡大中、業務用規格の販売もあり。
- 有馬芳香堂 – 2020年にハラール認証を取得し、マレーシアを始めとする東南アジアのイスラム諸国のローカル販路で販売中。昨今では、飲食店への販路展開にも挑戦中。
まとめ
このコラムを通じて、ハラール認証の重要性とその取得プロセスについて深く理解していただけたと思います。ハラール認証は単にイスラム教徒の市場にアクセスするためだけでなく、製品の安全性と品質を保証し、ブランドの信頼性を高めるための重要なステップです。認証プロセスの理解から、適切な文書化と管理、そして効果的な市場戦略の展開に至るまで、ハラール認証はビジネスの様々な側面に影響を及ぼします。もし、ハラール市場の機会を最大限に活用し、グローバルな競争力を強化したいとお考えであれば、さらに詳細な情報や個別のご相談が必要かもしれません。ハラール認証に関するさらなる質問や具体的な取得プロセスについての支援が必要であれば、いつでも私にご連絡ください。あなたのビジネスが新たなステージへと進むお手伝いをさせていただきます。