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マレーシアの出生率、真実はどこに?日本との比較で見える驚きの事実

マレーシアでのビジネスを検討する方がチェックすべき重要なデータの一つとして、マレーシアの人口推移が挙げられます。

マレーシアを問わず、国の将来を左右する重要な要素となる出生率。経済と人口動態は当然ですが連動しており、加えて出生率は労働市場の規模、消費者の数、さらには社会保障制度の持続可能性に直接影響を与えます。

今回の記事ではマレーシアと日本の出生率を比較し、その違いと経済に与える影響について見ていきます。またマレーシアの出生率の現状や人口構造の変化、そしてその数字の変遷に焦点を当てながら今後の経済発展に与える影響についても見ていきましょう。

マレーシアと日本の出生率比較

まずは基本事項となる、マレーシアと日本の出生率について。

マレーシアは総人口に対して若い世代が多く、高い出生率を維持しています。一方日本は高齢化が進み出生率が低下しています。

具体的なデータをご紹介すると、マレーシアの最近の合計特殊出生率(15~49歳の女性の平均出産数)は1.6。一方、日本の最新データによると2022年の日本の出生率は1.26。これは過去最低の数値かつ7年連続で前年を下回っています。

ちなみに東南アジア諸国の合計特殊出生率は以下の通り。

フィリピン2.7
インドネシア2.3
ベトナム2.1
マレーシア1.6
タイ1.5
シンガポール1.2

この差は両国の人口動態や経済状況、そして文化的価値観の違いから来る要因も大きく、将来の経済発展や社会保障政策にも大きな影響を与えるでしょう。

マレーシアの出生率の現状

マレーシアの出生率は、国の経済発展とともに変化しています。

2023年版のマレーシアの人口動態統計によると、2022年の出生数は前年比3.8%減の423,124人。少子化が進行していることが明らかになりました。15~49歳の女性の平均出産数を示す合計特殊出生率は、2021年の1.7からさらに減少して1.6。ちなみに男児の出生数は218,345人(全出生数の51.6%)、女児は204,779人という結果です。

民族別の出生率では、マレー系民族が最高の2.1、東マレーシアを中心とする先住民族が1.7、インド系が1.1、華人系は0.8という状況。第1子出生時の母親の平均年齢は27.9歳で、これについては2021年から特に変化はない状況です。

次に地域別の数値を見てみましょう。マレー系民族の割合が高い州は高い傾向にあり、トレンガヌ州(2.9)、クランタン州(2.7)、パハン州(2.1)。この3州を除く全ての地域が2.0を下回り、特にクアラルンプールは1.2で最低となっています。

マレーシアの合計特殊出生率は1970年に4.9という高い数字を記録していますが、その後50年以上に渡って低下が続き2013年には2.0を下回りました。2021年のマレーシアの出生率は1.7で、ASEAN加盟10カ国の中ではシンガポール(1.2)、タイ(1.5)に次いで低い水準です。ちなみに、この中で比較的出生率が高い国はフィリピンとラオス(2.7)です。

先進国が過去に経験した経緯を、マレーシアが今まさに経験している状況が垣間見え始めたというところでしょうか。経済発展に伴い教育レベルの向上と女性の社会進出が進む中、出生率の微減は当然の結果と言えます。今後マレーシアでは経済発展が進む影響も相まって、合計特殊出生率は低下していくものと見られています。

とは言え、日本と比較するとマレーシアは依然として高い出生率を維持しており、労働力供給源の点からは2070年頃に迎える人口ピークまでマレーシアの経済発展を長期で支えていくことが可能でしょう。

参考記事:M’sian fertility rate in 2022 lowest in 50 years | FMT

出生率変遷

1950年から2022年にかけてのマレーシアの出生率の変化について簡単に見てみます。

1950年代には4~5という高い合計特殊出生率が見られたものの、その後は経済発展、教育の普及、女性の労働市場進出などにより徐々に減。2020年代に入ると合計特殊出生率は1.9を記録し、2.0を下回る数字となりました。国の近代化によるマレーシアの人口構造の変化が大きく、この数字の低下は社会保障制度、さらには国の将来に大きな影響を与えていくでしょう。

日本との比較

日本とマレーシアの出生率を比較することで、両国の社会や経済の動向を理解するヒントを得ることもできます。

日本の高齢化と出生率の低下は、労働力の不足や社会保障費の増大といった課題を生み出しています。一方マレーシアは若い労働力を背景に経済発展を続けていますが、同時に近い将来訪れる少子化対策と社会保障制度の整備も重要な課題となっており、以下の取り組みが実施されています。

  1. 育児支援と働く母親へのサポート: マレーシア政府は、職場での育児支援や働く母親へのサポートを強化。例えば、職場の産休延長や子育てと仕事の両立を支援する施策が進められています。また、一部の企業では保育施設の提供や柔軟な勤務体制の導入などが行われています。
  2. 経済的インセンティブ: 政府は経済的なインセンティブを提供することで、子育ての負担軽減を目指しています。一定の収入レンジ層には所得税減税などの施策もあります。その他、子どもに対する金銭的支援や税制優遇措置が含まれます。
  3. 教育への投資: 教育の広い普及と質の向上は、長期的な人口政策の一環として重要視されています。より良い教育を受けることで将来的に子どもたちの生活の質を高め、少子化問題の解決につながると考えられています。
  4. 高齢者の社会保障: 高齢者に対する社会保障も重要です。年金制度の改善や高齢者のための健康ケアサービスの拡充が進められています。
  5. 女性の社会進出促進: 女性の社会進出促進も少子化対策の一環として重視されています。職場における男女平等の促進や、女性のキャリア支援プログラムが推進されています。
  6. 移民政策: 労働力不足を補うため、一定条件下での移民の受け入れが行われています。特に建設業や飲食業の人手不足は外国人労働者によって賄われているというのがマレーシアの実情です。これにより、人口構造のバランスと経済の活性化を維持しています。

これらの取り組みは、マレーシア政府が少子化進行による社会経済的な課題に対応するため進められています。しかしながら政策の効果は実施される地域や経済の状況によって異なる場合があり、全てが同じような効果を得ることが難しい現実もあるようです。

日本とマレーシアはこの少子化に対して、それぞれが異なる課題とチャンスを抱えている現状があることもお分かりいただけるでしょう。

少子化の影響

マレーシアの人口ピラミッドは少子化が進行していると言えど、まだまだ逆お椀型の人口ピラミッドを形成しています。

しかしながら少子化の影響は避けては通れず、将来的な若年層の減少は将来的に労働力不足や社会保障費の増加といった問題を引き起こす可能性があります。また、高齢者の割合が増加することで医療や介護などの社会サービスへの需要も高まります。

マレーシアの出生率の分析は、国の人口動態の理解を深めるだけでなく、経済成長、社会保障、教育政策など幅広い分野を見る上でも重要な意味を持ちます。そしてさらに国際比較を行うことでマレーシアが直面している問題が他国とどのように異なるか、また共通している点は何かを理解することも重要です。

マレーシアにとって大事なことは、出生率のデータを基にこれらの課題に積極的に取り組むこと。そして現在非常に好調な経済状況について、さらに持続可能な経済発展を目指すことが重要と言えるでしょう。現状の人口構造を理解し、今後の社会保障制度や経済政策を計画することがマレーシアの暮らし、そして経済面での持続可能な発展に欠かせない要素です。

まとめ

今回の記事では、マレーシアの出生率と経済の関連性について解説しました。

マレーシアの出生率の変化は、当然ながら今後の労働市場の規模や消費者数、さらには社会保障制度の持続可能性に直接影響を及ぼしていくことが分かります。

少子化の進展による人口構造の変化が将来のビジネス環境と経済成長にどのような影響を与えるかについても考察しました。これらが、今後マレーシアでのビジネスを検討しマレーシア市場について理解を深めたい方にとって効果的なビジネス戦略の策定にお役立ていただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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