コラム記事
11.302023
マレーシア産業の全貌:内需から製造業まで徹底解説
マレーシアは現在、独特の多様性、そしてスピード感がある発展で世界中の企業から注目を浴びています。それに合わせ、国民所得の上昇と人口増加に支えられ内需市場の成長が著しいです。
中産階級の拡大に伴い小売、サービス、観光業といったセクターが活気づいているほか、製造業、特に電子・半導体産業は、マレーシアをASEAN地域の重要な生産拠点として押し上げています。特にこれらの業界での日本企業の役割は非常に大きく、技術移転や合弁事業を通じて両国間の経済関係は強化されています。
今回の記事ではマレーシアの経済と産業の現状、内需市場の可能性、製造業の発展、そして日本企業のビジネスチャンスについて詳しく解説します。マレーシア市場の潜在力を理解し、新たなビジネスチャンスを見出すための一助となれば幸いです。
目次
マレーシアの基本データ
- 面積:
- 33万411平方キロメートル
- 人口(2022年推定値):
- 約3,300万人
- 首都:
- クアラルンプール
- 公用語:
- マレー語(Bahasa Malaysia)
- 宗教:
- イスラム教が主要な宗教。仏教、ヒンドゥー教、キリスト教など。
- 通貨:
- マレーシアリンギット(MYR)
- 政府形態:
- 連邦立憲君主制(君主制と選挙に基づく議会制民主主義)
- GDP(2020年のデータ):
- 約3760億米ドル
- 主要な産業:
- 製造業、農業、サービス業、電子製品製造、石油化学製品、農産物など。
- 主要な貿易パートナー:
- 中国、アメリカ合衆国、シンガポール、日本、韓国など。
- 教育:
- 義務教育があり高等教育機関も多く存在。国内外からの学生も多く受け入れも。
- 観光:
- 美しい自然景観、文化的な名所、歴史的な遺産を提供し、観光業が盛ん。
- 主要な観光地にはクアラルンプール、ペナン、ランカウイ島、ボルネオ島など。
- 交通:
- 高速道路、鉄道、港湾施設、空港などの交通インフラが発展。
マレーシア経済の現状と内需産業の展望
経済成長の基礎:国民所得と人口動態
マレーシア経済は国民所得の向上と人口増加により、持続可能な成長を遂げています。また、マレーシアでは人口ボーナス期真っただ中。2070年の人口増ピークによる経済成長も確実視されています。
現状では中間層の拡大によって内需市場が活性化しており、消費者の購買力の増加が見られます。これは小売業、サービス業、観光業などの内需関連産業に大きなビジネスチャンスをもたらしています。
しかしながら国民平均所得で見てみると日本より低い現状があるため、高額な商品は一部の富裕層のみがターゲットになっています。国民の所得に関する詳細はこちらのコラムを確認ください。
日系企業は現地の購買力とニーズを把握し、地域の特性にも注目をした上で消費者ニーズに応える製品やサービスを提供することで市場シェア拡大につなげていくことが重要でしょう。
内需産業の多様化とビジネス機会
マレーシアの内需市場は、小売、サービス、観光、不動産、建設、教育など多岐にわたる業界で成長が見られています。中間層の増加に合わせこれらの業界での消費が拡大しているため、日系企業には様々なビジネスチャンスが広がっています。
最近ではドン・キホーテやTSUTAYAなど日系の小売店の進出が注目される機会が多いですが、サービス業では高品質な日本式サービスが好評を博し、日本の文化や技術を生かしたビジネスモデルが注目、そして支持されています。
その代表例として、飲食店や美容関連事業の進出が非常に盛んです。駐在員や華人をターゲットとした高級エステ店や日系オーナーの美容院もクアラルンプール中心に出店が続いていて、大型モールへの新規出店では必ず日系企業の出店があるほどです。
都市開発とインフラ整備の可能性
コロナ明けのマレーシア、特にクアラルンプールなどの主要都市の都市開発とインフラ整備は非常に勢いが感じられます。不動産市場の活性化に伴い、商業施設、オフィスビル、住宅プロジェクトが増加。最近では、2022年に三井不動産がクアラルンプールの中心街であるブキビンタンにららぽーとの1号店を出店しました。彼らはクアラルンプール国際空港周辺に三井アウトレットモールも出店していることでも知られています。
2023年後半には、高級モール運営で有名なパビリオン社が高級住宅街であるブキダマンサラに新規モールを出店。駐在員街であるモントキアラにも新規大型コンドミニアムを建設するなど、クアラルンプールを中心での商業施設やコンドミニアムの建設需要は継続してあるようです。
しかしながらモールがどんどん増えていくマレーシアではあるものの、顧客目線で言うと全てのモールが活況であるとは言えません。新規出店したもののテナントの出店計画が芳しくない、立地条件の影響を受けて集客に苦労しているモールの例も見られます。
その点、①Suria KLCC、②Pavilion Bukit Bintang、③Sunway Pyramid、④Mid-Valley Mega Mallの4箇所は安定して集客力があるモールであると言えるでしょう。
マレーシアの製造業:主要産業としての地位
製造業の現状とGDPへの貢献
マレーシアの製造業は国のGDPに大きく貢献しており、製造業依存の貿易立国と言えるでしょう。特に電子機器、自動車、化学製品などの分野で成長を遂げており、これらの産業は高度な技術力と生産能力を要求されます。日系企業は早い時期からその点に着目し、長きに渡ってマレーシア市場に進出しています。
代表例としては、トヨタ自動車などの自動車製造メーカーやソニーなどの家電メーカーも進出しています。食品業界ではキューピーやヤクルトが現地で製造拠点を設立し、JAKIMと呼ばれるマレーシア政府系ハラール認証を取得。東南アジアのイスラム圏への輸出ビジネスにも積極的に展開されています。
日本企業はこれらの分野で技術協力やビジネス拡大を目指すことが可能であり、マレーシアの経済発展に貢献すると同時に、自社のグローバル戦略を強化するチャンスがあります。
電子・半導体産業の拡大と市場機会
電子・半導体産業の成長はマレーシア経済の中でも特に注目される分野です。世界市場での半導体需要の増加に対応するためマレーシアは重要な生産拠点となっており、高品質な製品で市場をリードしています。日系企業は、この分野での技術提携や生産拠点の設立などビジネス拡大が可能であり、グローバルな競争力を強化する絶好の機会を提供しています。
2023年後半には、京都の半導体メーカーであるローム社がマレーシアでアナログIC生産強化のための新工場を竣工。さらなる事業拡大に積極投資されています。
参考事例:ロームグループ マレーシア工場に新棟竣工 | ROHM
日本企業の役割とビジネスチャンス
日本企業は技術移転や合弁事業を通じてマレーシアの製造業に大きく貢献しています。高度な技術力と品質管理能力を活かし、マレーシア市場で競争力を高めている点からも、日本企業がマレーシアの製造業分野でさらなるビジネス拡大や新しい市場の開拓が可能な位置にいる、と言えるでしょう。
マレーシア産業の未来展望と日系企業の役割
産業発展のための政府の取り組み
マレーシア政府は産業の多角化と高付加価値化に注力し、特に外国企業の投資を積極的に誘致しています。マレーシアには欧米系の電子・半導体製造業も積極的に進出しており、今後も世界的な製造拠点化を推進する話が絶えません。実際に、世界的な企業であるBOSHやマイクロンはここ数年ペナン島の製造拠点化への事業投資を継続しています。
持続可能な経済発展を目指す政府の方針は、日本企業にも新たなビジネスチャンスを提供しています。環境技術やエコフレンドリーなビジネスモデルへの投資は、将来の市場での競争力を高める重要な要素となっています。
参考事例:Bosch、マレーシアに半導体テストセンター新設 | EE TIMES JAPAN
グローバルサプライチェーンの中でのマレーシアの位置づけ
マレーシアはグローバルサプライチェーンの重要な役割を担っています。電子機器や自動車部品の生産部門でマレーシアは世界的な供給基地となっています。
実は東南アジアに製造拠点を検討している企業にとって、マレーシアは多くのメリットを持つ国なのです。具体的なアドバンテージとしては①港湾、②外国人労働力、③人件費、④語学、⑤治安、などが挙げられます。周辺諸国は現在人件費が軒並み高騰、生活コストもマレーシア以上にインフレ状況下に置かれています。
また政府による外資系企業誘致に関する奨励もあるため、今後もマレーシア市場への投資は続くと予想されています。これは日本企業にとって大きなビジネスチャンスであることを意味し、グローバル市場で競争力を高める機会となるでしょう。
具体的な日系企業の進出事例
- ソニー
- マレーシアで主にエレクトロニクス製品を製造販売。特にテレビやオーディオ機器、デジタルカメラ、スマートフォンなどの家電製品が中心です。マレーシア市場においてソニー製品は、高品質で革新的な技術を持つとして高い評価を受けているほか、国内に直営のソニーストアも複数出店。エンドユーザーへのマーケティング活動にも勢力的な姿勢が伺えます。
- パナソニック
- マレーシアで家電製品を製造販売。主な製品には冷蔵庫、洗濯機、エアコン、照明器具などがあります。また、環境に優しい製品の開発にも力を入れ省エネルギー製品の提供を積極的に行っています。マレーシア国内でのパナソニックブランドの認知度は高く、多くの家庭で利用されています。
- トヨタ自動車
- マレーシアで主に、セダン、SUV、ピックアップトラックなどの幅広い車種を製造販売。トヨタ車はその耐久性と信頼性からマレーシア市場で高い人気を誇っており、地元の自動車産業の発展にも寄与しています。
- 味の素
- マレーシアで調味料や食品を製造販売。代表的な製品には、世界的にも知られるうま味調味料「味の素」やスープ類、冷凍食品などがあります。マレーシア政府直轄のハラール認証であるJAKIMも取得し、マレーシア国内外のムスリム市場で広く受け入れられています。
- ヤクルト
- マレーシアにおいて乳酸菌飲料「ヤクルト」を製造販売。健康志向の飲料ヤクルトは消化器系の健康維持に役立つとされ、多くの消費者に支持されています。味の素同様JAKIM認証を取得しており、ローカルの学生生協でも採用されるなどマーケット拡大に成功している企業です。
- キューピー
- マレーシアでマヨネーズやドレッシングなどの調味料を製造販売。地元の味覚に合わせた製品展開を行い、特にマヨネーズはマレーシア国内で広く利用されています。また、キューピーは食品の安全性と品質に対する高い基準を持つことで消費者からの信頼が厚く、特に多くの飲食店の原材料として採用されています。(同じくJAKIM認証商品)
まとめ
今回の記事では、内需から製造業までを網羅したマレーシア産業の全貌について紹介しました。
マレーシア経済は顕著な成長を遂げる中での中産階級の増加により、小売、サービス、観光業などのセクターが活性化。これらの業界で日系企業にも大きなビジネスチャンスが広がっていることがお分かりいただけたでしょう。
特に電子・半導体産業はASEAN地域の中でもマレーシアが重要な生産拠点となり、これらの経済発展が日本企業にとっても今後新たなビジネス機会を提供していくことになるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。