コラム記事
12.42023
マレーシアの生活コスト「日本の1/3」は本当? | 現地在住4年目の著者が解説
メディアやSNSなどで「マレーシアの生活コストは日本の1/3」という文言を見かける機会が多く、生活費が安く抑えられると認識している方も多いマレーシア。2019年12月にマレーシアのクアラルンプールに家族で移住しやっと4年目を迎えた筆者ですが、この表現には違和感を感じます。
私としては、「家族構成と食生活次第で生活費は日本より”確実に”高くなる。1/3の生活コストはもはやありえない」という結論です。
そこで今回の記事ではマレーシアでの生活コストの実態について、在住3年の経験を元に「家族構成と食生活次第で生活費は日本より”確実に”高くなる」、その理由について下記でトピックに分けて解説します。マレーシア移住やマレーシアでの就労を検討している方はぜひ最後までお読みください。
サンプルモデル
家族構成と生活様式はマレーシア生活でのコスト管理を図る上で重要なポイントとなりますので、下記2つのサンプルモデルを用いて説明します。
① 4人家族(40代夫婦と小学生の子供2人)で日本食主体の食生活
② 30代男性の単身移住で外食主体の食生活
家賃
①家族移住
コスト:「日本と変わらないが、場所次第ではマレーシアの方が高い」
移住先の街で一番人気はなんといっても、首都クアラルンプール。この街には日本人のみならず海外から赴任や移住した駐在員が住む「モントキアラ」という街があります。特に日本人や韓国人の比率が高く、日本人にとっては母国にいた時と同じような日常生活を営む上で全く困ることはありません。
駐在期間3年前後という任期が一般的な日系企業の駐在員家庭の子供は日本人学校に通学する場合が多いのですが、このモントキアラへは日本人学校の送迎バスが巡航しています。そのため、利便性からもモントキアラを生活の拠点にされる方が圧倒的に多いです。
住居はコンドミニアムという高層マンションタイプのものが一般的で、24時間対応のセキュリティ、スイミング・プール、ジム、そして駐車場も完備がスタンダード。家賃は、4人家族に適切な3LDKサイズでおおよそRM3,000~RM5,000(9万~16万円)/月が基本ラインであると言えます。
都内の家賃相場と比較すると当然、東京の方が敷地面積当たりの家賃は高額になります。一方で地方都市と比較すると実はクアラルンプールの方が家賃が高いと感じる方も多いのではないでしょうか?
②単身移住
コスト:「安全の問題もあるので、意外とマレーシアでの一人暮らしは高い」
「一人暮らしなので狭くて安い住居で良い」と考える方も多いかもしれません。しかしながら海外での安かろう悪かろうは日本より顕著、そして防犯の面にも直結しますので価格先行で住居を決めることはおすすめしません。現地採用で就労している方の場合、マレーシアでの通勤手当制度はない/少額というシステムなこともあり、通勤コストを削減するためアクセスの良い駅に近い、もしくは駅直結の1DK物件を選ぶ傾向が強いです。
そんな彼らの家賃相場は、RM2,000~RM3,500(6万円~10万円)/月が基本ラインです。敷地面積当たりで考えると、家族向け物件と比較して割高感があります。またマレーシアでは今家賃相場も上昇傾向にあるため、家族向け物件を複数人でシェアして暮らすという手段も実は人気です。
食費
①家族移住
コスト:「日本食主体の食生活は日本のそれより確実に高い」
私が住むコンドミニアムには欧米、東南アジア系を問わず多くの国籍の方が住んでいます。彼らにどのような食生活を取り入れているかと質問したところ、大半の家庭が母国料理を主体とした食生活を選択している、との回答を得ました。そして我が家も日本で生活していた頃と何も変わらない食生活をマレーシアで取り入れています。特にモントキアラでは日本食を販売する小売店が多く、日本食屋も充実しているため日本食調達に困ることはありません。
しかしながら、日本規格の日本食材は輸入ですので当然割高になります。日本の売価の1.5~2倍といったところでしょうか。それ以外の青果や精肉は現地で調達できるものを利用しています。我が家では週末の外食を含めて、RM3,500~4,000(10万円~12万円)/月の支出が基準と考えています。
②単身移住
コスト:「安く維持することは可能だが、栄養バランスには注意」
勤務体系やシフトなどの影響もあるかもしれませんが、私の知る限り単身者の自炊比率は低く外食やテイクアウトを主体とする方が多い印象を受けます。マレーシアではエコノミーライス(経済飯)と言われるビュッフェスタイルの食事があり、価格もRM10(300円)ほどで購入できるためローカルにも大人気です。
その他ファストフードは街中であればどこにでも出店していますし、デリバリーでオーダーできるため食に困ることはありません。しかしながら栄養バランスは決して良いとは言い難く、健康を優先的に考えたい人にとっては栄養バランスの取れた自炊主体の食生活を取り入れざるを得ないと言えます。
光熱費
コスト:「日本と比較しても安い」
水道代、ガス代、電気代に関しては日本と比較しても割安だと言えます。特に水道代とガス代は日本とは比較にならない安さで、私自身もそれぞれRM10(300円)/月以上の支払いをした記憶がないほどです。
電気代に関しては日本と比較すると少し安い、と言える程度です。我が家の例で言うと、RM250(8,000円)/月が平均的な電気代支出ですが、エアコンを使わずファン(天井設置型扇風機)主体で暑さをしのげばRM150~180(4500円~5000円)/月までコストを抑えたこともありました。
単身赴任の方であれば、日中は職場勤務のため光熱費はさらに安く維持することが可能です。
教育費
コスト:「日本人学校・インター校問わず高額」
教育費はコストではなく子供の未来への投資ですので、コストという表現は不適切という点を承知で説明しますが、マレーシアでの教育コストは非常に高いと断言できます。私達日本人はここでは外国人であり、ローカル価格でローカル学校に通学させる家庭はほぼ皆無です。ほぼ全ての子供は日本人学校もしくは現地のインターナショナルスクールに通学します。
クアラルンプール日本人学校の学費は、小学生RM1,300/月で中学生はRM1,470/月。つまり最低でも4万円~5万円/月の学費がかかります。インターナショナルスクールであれば選択する学校次第では学費は青天井で、Year1(小学1年生)であってもRM5,000~6,000(15~18万円)/月の学費が必要という学校もあります。インター校で学ばせる選択肢をされる方は、必ず事前に各学校の調査や視察をされることをおすすめします。
日本での公立学校の学費は教育内容のレベルと照らし合わせてみても非常に割安であり、私立であったとしてもマレーシアのインター校並の学費が必要な学校はほぼ皆無だと言えます。
税金
コスト:「税制は日本と比較して非常に恵まれている」
税金に関しては、マレーシアのそれは日本と比較すると可処分所得に非常に恵まれていると言えます。所得税に関しては最大30%、そして日本のような住民税なるものもありません。また株式運用によるインカム・キャピタルゲインへの課税も現地銘柄に限り非課税というメリットもあります。詳しくはこちらのブログで紹介していますのでご覧ください。
医療費
コスト:「医療費は全額負担なので医療保険必須」
マレーシアでは日本の国民皆保険のような仕組みはなく、10割負担が当たり前という環境です。そのため各個人で民間保険会社が提供する医療保険を契約するのが一般的で、マレーシアに住む多くの日本人も医療保険を契約しています。あなたが駐在員であれば日本で契約した上で渡航するパターンが多いでしょうし、現地採用の方は現地で自主的に契約するのが一般的です。
クレジットカードの医療保険でカバーしたいと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、移住を前提にした場合は内容やその適用期限などで適用外の事例もありますので事前に確認が必要です。
交通費
コスト:「マレーシアの交通費は非常に安い」
マレーシアでの交通費は、日本と比較して割安と言えます。特にクアラルンプールでの移動で重宝するGrabと呼ばれるライドシェアサービス(タクシー)は、受給バランスで賃走運賃が上下するものの、それでも日本のタクシー相場と比較してもかなり割安です。
クアラルンプール国際空港からモントキアラまでの1時間の移動では、最安値RM70(2100円)程度で賃走可能です。しかしながらタクシーに関しても安かろう悪かろうの一面もあり、昨年も日本人利用者が深夜のタクシー利用でドライバーの居眠りによる大事故に巻き込まれたという事件もありましたので、価格だけでは選ばず自身の安全を第一にした選択をおすすめします。
またエアアジアなどLCC(格安航空)も充実しており、国内はもちろんのこと東南アジアエリアへの出張や旅行も比較的安価で利用できる点はマレーシアならではの魅力です。クアラルンプール〜シンガポール往復(フライト1時間)は1万~2万円も可能となるため、大阪~東京の新幹線往復と比較しても非常に割安感を感じます。
インフレや為替
これからマレーシアでの就労や移住を検討している方にとって、気になるのは現地のインフレ率や為替ではないでしょうか?マレーシアのインフレ率ですが毎年2~3%を維持している状況です。私自身もこの3年間で物価の上昇を実感しており、今後の生活コストには不安を感じている次第です。
また為替レートに関しては、2019年渡航時と比較して約30%も円の価値が下落しています。日本からマレーシアへ送金をベースにした生活費管理の方にとっては、この円安の状況は悩ましいはずです。対シンガポールドルではなんと 約40%も円の価値が下落しており、シンガポールの日系企業駐在員は維持コストの問題から帰国者が増えていると聞きます。
マレーシアのみで収入を得て生活する場合は対日本の為替を意識する機会はそう多くないかもしれません。しかしながら、先述のようにインフレ率からも毎年物価が上がっていますので、それに伴う所得上昇を前提とした転職や昇格など、中期的計画も視野に入れて検討することも大事です。
まとめ
今回の記事では、世の中で言われている「マレーシアの生活コストは日本の1/3なのか?」について、筆者の暮らしの体験に基づいて解説しました。
メディアやSNSで見かける「マレーシア1/3生活コスト論」はもはや存在していないと断言できます。あなたの家族構成や食生活次第では、日本での生活費と比較して確実に高額になる可能性が高いことがお分かりいただけたでしょう。
本文でも説明をした通り、特に食費と学費のコスト構成が高くなる家庭が多い実情がありますので、お子さんをお持ちの家庭でマレーシア移住を検討される方は、学費を中心とした生活費のシミュレーションをしっかり計画されることをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。