コラム記事
11.132023
OEM・委託製造におけるハラール認証商品開発の5つの注意点を解説
ハラール認証を取得している事業者の大半は、自社工場で製造した商品で認証を取得しています。展示会や売り場で目にする商品を見てみると、大体の企業がいわゆる中小企業規模の事業者が多いという特徴もあります。
そのような背景も手伝ってか、「ハラール認証は自社製造である必要があるのか?」と思われがちですが、実はそんなことはありません。現在すでに市場にて販売されている商品でも、委託先で製造しているものもあるのです。安価なコストでリスクも低くハラール市場に参入できるのではないか?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
マレーシアを始めとする東南アジアのムスリム諸国で販売している経験から申し上げると、OEMによるハラール認証商品開発は”販売面も考えると”簡単ではない、というのが私の結論です。私自身食品メーカーで営業・商品開発経験があり、その企業では自社商品とPB商品を製造卸していましたので、OEMを提供する側の立場も十分理解しています。
今回の記事では、OEM・委託製造におけるハラール認証商品開発の5つの注意点について詳しく解説します。
目次
OEMでのハラール認証取得は可能
結論から申し上げますと、OEMによるハラール認証取得商品の開発は可能です。
実際に複数の企業でハラール商品開発のOEM製造が実現されており、ここマレーシアでもそのような商品を目にしたことはあります。
最近では小売店のPB商品をハラール認証取得メーカーが製造請負するパターンも目にすることがありました。従って、メーカーのみならず小売店もハラール認証のOEM化を実現させることは可能ということになります。
しなしながら、最近は製造キャパシティーや人件費高騰の問題でOEMの受け入れ自体をNGとする企業も増えて来ています。また、輸出を得意とする企業にとっては円安状況は最高のチャンスということもあり、自社商品の販売を優先させるという話はよく聞きます。
自社のハラール認証協会加盟の有無
ハラール認証商品をOEMで開発する場合、ハラール認証団体に必ず加盟しなければならないということはありません。この点に関しては、実は当事者にならないとわからない部分と言えるでしょう。
OEMにおける認証団体加盟の必要性は、「裏面に販売者表記をするか否か」の意思決定に依存します。これはハラール認証を付与する団体次第なのかもしれませんが、私が知る限り複数の認証団体で「販売者の表記がなければOEM先の認証登録のみでOK」という回答を得ています。
マレーシアのJAKIMによる、OEMでのハラール認証については製造元が認証を取得していれば販売者の認証団体加盟は求められていない、というスタイルを踏襲したのかもしれません。
従って、表面には依頼先のブランドロゴが印刷されているが裏面には製造委託先の情報しか掲載されていない、という商品があることも事実です。
ただ、販売者としてのハラール認証維持費用はメーカーとしての申請費用と比較すると安価のようですので、費用次第では販売者として認証団体に加盟するのもよろしいのではないでしょうか?
弊社では、自社商品でハラール認証を取得しマレーシアを始めとする東南アジアのムスリム諸国に輸出を実現させた経験を元に、ハラール認証取得サポートを提供しています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
製造委託先の製造環境
OEM委託によるハラール認証商品の開発に着手することになったと仮定しましょう。大事なステップは、①ハラール認証を取得している企業に依頼するのか、②ハラール認証を取得していない企業に認証取得を含めて依頼するのか、を決定することからスタートとなります。
①と②、それぞれで注意しなければならない点がありますのでこちらで詳しく説明します。
①ハラール認証を取得している企業に依頼する場合
ハラール認証を取得している企業の場合、比較的スムーズに商品開発を実現させることが可能となります。製造環境に関して言えば既に所属している認証団体によって承認されており、問題がないためです。
②ハラール認証を取得していない企業に認証取得を含めて依頼する場合
ハラール認証を取得していない企業に認証を含めて依頼する場合は、相当の覚悟が必要です。「ハラール認証とは?」という概念の部分から情報共有と理解が必須になりますので、OEM委託先の覚悟が大事になります。
実際に理解をしたとしても、全ての商品をくまなくチェックして問題がないかを確認することはかなりの労力を要します。また2次原材料の詳細も確認が必要になりますので、原材料管理に知見がある品質管理部門者を専属で配置する必要もあります。
最終的にはハラール認証団体の判断次第になりますので、自主的に費用をかけて準備をしても、結局は認証取得が認められなかったというパターンは避けなけれななりません。
弊社では、ハラール認証団体と連携した認証取得事業者と業務提携を締結しており、原材料や製造ラインの事前チェックにより、ハラール認証取得の可否を事前に確認できるサービスを提供しています。ご興味のある方はぜひ、取得に動かれる前にお声がけください。
③自社へ原料支給してもらう場合
完全外注のOEMとは少し異なりますが、原材料のOEMも選択肢として検討したい企業もいらっしゃるのではないでしょうか?
自社のキャパシティーや製造技術の問題で原材料を製造依頼することは多くの食品企業で一般的です。「自社工場でハラール認証を取得したいが、原料支給の場合でも可能か?」という質問を受けることがありますが、「条件付きで可能」が私の回答です。
具体的な条件とは、①ハラム原材料の使用がない、②ハラム原材料のコンタミがない、③ ①と②を維持できる、④誓約書に署名できる、という4点です。
このあたりの線引きはハラール認証団体によってさまざまですので、事前に問い合わせや弊社の専門窓口に相談されることをおすすめします。ハラール認証申請は後手に回ると費用と時間をかけたのに認証取得できなかった、ということも大いにあり得ますので事前の計画が大事になります。
④製造委託先の今後の事業展開
OEMをメイン事業として運営されている食品メーカーは、多くの顧客を抱えていると容易に想像ができます。そのため、彼らが扱う原材料が常に一定であるとは限りません。
商品開発時は問題がなかったけれど、期中に工場内で他社向けにハラム原材料の使用を始めたということはあり得るケースです。ハラール認証の管理は現場の品質管理担当者のみというのはよく聞く話で、営業部門との連携不足により別部門でそのような商品開発が進んでいた、ということになればハラール認証の維持は不可能となります。
OEM先であるがゆえに自社の管理が100%届くわけではありませんので、細心の注意を払う必要があります。個人的には、社長や役員主導よる全社管理体制を構築してスタートさせることをおすすめします。
認証維持コスト
既にハラール認証を取得しているOEM先であれば追加コストは不要ですが、ハラール認証の取得も含めて委託先に依頼する場合は申請費用やそれに関する維持コスト(特に人件費)の負担も生じる可能性が高いです。
ハラール認証取得によりハラム商品の取り扱いが不可になる機会費用も検討する必要がありますので、依頼主としても責任が伴います。
シンプルな商材を取り扱うのであれば比較的維持費も安価なのですが、加工度の高い商品であればあるほど管理コストが増大する点には注意が必要です。
製造ロット
OEMによるハラール認証商品開発は企画側が全てではなく、その後の販売面も非常に重要となります。
一般的にOEMは一定の製造ロットが求められるので数を販売できる販路が重要になります。OEM受託先の規模にもよりますが、製造出荷単位で考えると最低でも単品100ケースや原材料であれば数百キロ単位というのが一般的でしょう。
なによりも大事なことは、「販路を持つこと」です。
商品開発より先にこの点に注力されることをおすすめします。販路がないままハラール専用商品を開発してしまい、結局は全く売れなかったという話も聞くことがありますが、これは絶対に回避しなければなりません。
OEM開発でもリスクを限りなく抑える方法は、国内で販売している既存品でハラール認証を申請することです。前職の食品メーカーでは、国内の小売店に納品している複数の通常商品でハラール認証を取得したためリスクはゼロでした。年間数百万袋販売しているので、1袋あたりにかかる認証費用は0.001円の世界です。
ハラール商品を特別仕様で規格するのは大口の顧客と取引する際以外はおすすめしません。
販売者視点でのデメリット
弊社ではシンガポールにて日本ハラール商品に特化した輸入商社を2023年に立ち上げました。現在、現地の小売店数社と取引を開始し、メーカー視点と商社視点で事業を展開しています。
OEM製造のハラール認証商品を販売していますが、自社製造メーカーと比較して以下の点が取り扱いする上で課題であると感じています。
①受注生産で納期もかかる
②製造ロットが大き過ぎる
この件に関しては圧倒的な販路がある商社であれば問題はないと思いがちですが、マレーシアで事業展開している日本食専門輸入商社に確認したところ、新規商材であまりにもロットが大きいものは小売向けでは販売しにくいということでした。
作りたいものを作るというスタンスであれば尚更在庫リスクが生じますので、現地小売店の棚調査や現地商社との商談など、まずは当たりを探ることからのスタートがおすすめです。
まとめ
今回はOEM・委託製造におけるハラール認証商品開発の5つの注意点について詳しく解説しました。
OEM委託製造によるハラール認証商品開発は一見簡単そうですが、取り扱い商品の販売状況や委託先に製造環境に依存する面が強いので、事前に委託先と上記内容について合意契約を締結することをおすすめします。
「手間や維持費を考えると自社でハラール認証商品を開発してみたいが、申請費用が高額になると不安」という方には、最小SKUで格安にハラール認証を提供する認証団体も紹介できますのでお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。