コラム記事
11.202023
マレーシアの現地採用について解説 | 給料面や処遇について経験者の声も紹介
マレーシアで就労している日本人の雇用スタイルは、①起業、②駐在、そして、③現地採用の3つが一般的です。マレーシアでは特に製造業を中心とする日系企業の駐在員が多いのですが、その一方で実は日本人の現地採用が盛んであることをご存知でしょうか?
職種も多岐に渡り、大卒20代前半の方からミドル層の転職組まで幅広い年齢層の方がここマレーシアで就労されています。今回の記事ではマレーシアにおける現地採用の現状を、現地採用経験者のリアルな声と共にお届けします。
目次
現地採用とは?
まず、現地採用とは具体的にどのような雇用を意味するのか?これは文字通り、現地企業に現地で採用(契約)される雇用形態となります。雇用元はマレーシア資本の企業のみならず、あくまで現地に登記されている企業に直接雇用されるという意味で理解ください。
職種
マレーシアで就労したいが、どのような仕事があるのかが気になる方は多いのではないでしょうか?人材派遣企業のHPは当然のこと、現地で発行されている日本人向け無料情報誌には毎週ジョブオファーが掲載されています。
無料情報誌での掲載では、日系企業の営業職や工場管理者の募集をよく見かける反面、ネットで募集されている案件ではBPO関連の日本人採用枠が非常に多いと感じています。
BPOとはBusiness Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略称。業務の外部委託請負を通じて、依頼者の事業コスト削減や運営のスリム化を実現する事業が主なサービスです。
BPO企業は外資系が多いものの、その案件自体は日系通販事業や旅行予約サイトのコールセンター業務が一般的という事情もあり、日本人及び日本語話者の採用に積極的です。
マレーシアでの日本人の現地採用事情はBPO企業への就職が特に多く、その年齢層は20代中盤からと比較的若年層が主流という特徴もあります。
駐在員との相違点
駐在員と現地採用の相違点ですが、まず雇用主の違いが挙げられます。駐在員は、日本の本社で雇用されている社員がマレーシアの現地子会社に出向している、という形がイメージしやすいのではないでしょうか。
駐在員は日本本社に籍を置きつつマレーシア法人にも籍を置く、という二足の草鞋的な立ち位置で、およそ3~5年の現地勤務という任期が一般的です。一方現地採用者はあくまでマレーシアの法人のみで雇用されており、任期という概念ではなく企業との契約ベースで滞在を延長することも可能です。
駐在員の特徴としては、手当や福利厚生の充実も挙げられるでしょう。しかしながら、毎晩深夜までの残業、本社社員がマレーシアを訪れた際のアテンド、週末の接待ゴルフ、東南アジア周辺国への頻繁な海外出張など、公私において本人のみならず家族にも負担が多いという話もよく聞きます。
そして現地採用者は、職種にもよりますがBPO勤務の場合はシフトに準じた勤務体系が一般的。契約次第では早朝勤務、深夜勤務のシフト交代制も少なくないようですが、基本的には残業も少ないためプライベートの時間も確保できるというメリットがあります。
気になる雇用条件
日本から文化も違う国に就職するとなると、心配ごとは多くなるでしょう。当然ですが就労が前提となるため、まずは企業がどのような雇用条件を提示しているかを知ることが、現地採用を検討する上で非常に大事と言えます。
給料
無料情報誌やオンラインサイトの募集要項情報によると、RM8,000〜RM10,000(25万〜32万円)/月が一般的な給料水準と見受けられます。経歴や業種によってはRM15,000(46万円)/月という募集枠もありますので、ご自身の経験やスキル、資格などと照らし合わせて適した募集内容を探されることをおすすめします。
昇給に関しては各社それぞれテーブルがありますので、長期でのキャリアプランを検討する場合は特に確認が必要になります。しかしながら、顧客企業からのヘッドハンティングや転職、昇給や駐在員ステータスへ更新などで給料水準を上げている方もいます。キャリアプランの中で転職など新しい選択肢を常に照らし合わせることも、昇給を実現する上で大事なアプローチです。
年齢
一般的には最低3年の就労経験者が対象と言われていますが、BPO職であれば大卒後ストレートでの就職が可能なケースが多いですし、50代のセミリタイヤされた方がマレーシアで再就職というケースもありますので、年齢に関しては非常に幅広いと言えるでしょう。専門性が高い職種では経験豊富な30代以降の方が対象となる傾向が高い印象です。
補助(手当)
BPO職における手当の特徴として、語学手当が挙げられます。日本案件を対応する日本語話者には別途RM1,000前後(3万円)/月の手当を支給している企業は多いようです。
商社や卸業、製造業関連の日系/ローカル現地企業の中には、家賃補助や子供の学費補助を提供している企業もあります。安心した環境下でこれまでの経験を活かして働きたい場合の選択肢として、良いのではないでしょうか?
福利厚生
有給や傷病休暇そして医療費補助を提供しているBPO企業は多いと言えます。勤務期間次第では年間30日の有給取得も可能であったり、年間14日の傷病休暇も現地採用を考える上で大事なポイントの一つです。
貯蓄面では、よく日本の年金制度と並べられるEPF(Employees Provident Fund)という民間企業従業員向け積立基金。外国人は加入義務がないという背景から日本人就労者には勧めない、もしくは積立を行わないという企業もあるようです。年利5%前後の運用実績かつ確定申告で控除対象になる点は魅了的ですが、短期でマレーシア就労を考えている場合は暴落のリスクもありますので注意が必要です。
賞与
賞与に関しては各社様々ですが、下記で紹介する知人S氏の経験談では契約満期を迎えて更新するたびに、ボーナスが支払われたようです。
ボーナスは生活費補填は当然のこと、貯蓄に大きな影響を与えますので現地就労を検討する際には必ず確認されることをおすすめします。
現地採用に関する注意点
SNSは現代の生活やビジネスにおいてインフラ的役割を果たすほど大きなものになっています。マレーシア就職を募集する企業の多くも、SNS媒体で募集要項を掲載しています。最近ではマレーシア生活を解説するブログやSNS投稿を介して人材募集する企業が多く見られることからも、いかにマレーシア就職の需要が大きいかということがわかります。
大半の案件は日系大手の人材派遣会社や現地で信頼を得ている企業などが提供する案件ですので安心ですが、とは言え、必ずしも全ての募集がそうではあるとは限りません。
就労ビザ発給を確認してから渡航する
海外では、ビザの発給が計画通りスムーズには行かないという前提で行動することが最適解です。ジョブオファーという内定が出て、企業はその時点から就労ビザの手続きに移ります。コロナ禍では半年かかるパターンもありましたが、現在では企業が正式なプロセスを適切に進めた場合、2カ月ほどで取得が可能です。
就労ビザがない状態にも関わらず、「まずは現地に来てほしい。そこから就労ビザ発給の手続きを進める。」と声をかける企業もありますが、十分注意してください。
また契約書の条件もしっかり確認することが大事です。具体的には給料やボーナス面は当然のこと、渡航費や自宅契約までのホテル宿泊費の負担についてなど、初期投資の部分まで細部に渡り確認することをおすすめします。
内定が出て浮足立った状態で契約書にサインしてしまったが条件が期待したものではなかった、内定通知メールは届いたものの契約書に該当する書類はなかったがとりあえず渡航してしまった、という事例も耳にします。
就労ビザなしステータスは観光客と同じ
就労ビザがないイコール、観光客と同じステータスです。そのため銀行口座の開設や住居契約の締結は不可能となります。この事実をしっかりと念頭に置き、「就労ビザは申請中だがまずは来てほしい」や「マレーシアに来てから申請する」というアプローチには気をつけてください。
現地採用経験者S氏のインタビュー
ここからは、マレーシアで4年間に渡り現地採用での就労を経験したS氏のインタビューを紹介します。
マレーシア就職を決めた理由
元々海外各地で就労していたこともあり、東南アジアでの勤務を検討した中でマレーシアに魅力を感じました。BPO職であればビザの発給も比較的早いと聞いていましたし、就労時間も契約ベースでなので趣味やプライベートも充実させることができるのではと考え、マレーシアでの現地採用を選択しました。
条件面
給料に関しては手当など含めて総額RM8,000(25万円)/月からスタート。転職を経てRM9,500(30万円)/月にステップアップすることができました。ボーナスに関しては契約満了時に支給という条件でした。有給休暇も最終年は30日/年もあり、プライベートが非常に充実した1年だったと感じています。
プライベート
シフト制の勤務体系なので毎日同じスケジュールではないですが、勤務時間は契約通りなので残業はほぼありませんでした。早朝勤務の際は夕方前には仕事も終えているので、趣味のカフェ巡りや写真撮影に時間を有意義に使える環境も良かったです。有給も利用して海外旅行も経験できました。
現地採用に向いている人は?
海外に興味があって気軽に現地で就労してみたい、という方にはBPOがおすすめです。日本のような職場ストレスを感じることもなく、人間関係も良い意味で程よい距離間を維持することができました。契約ベースの就労体系なのでプライベートも充実させることができます。スキルアップやキャリアプランを考えて現地で転職される方もいますし、人それぞれ考えと行動次第で充実した人生設計ができるのではないでしょうか。
現地採用を検討されている方にアドバイス
私は4年間の現地採用を経て日本で就職することを選択しましたが、マレーシアでの就労は素晴らしい経験になりました。自身の年齢や家族構成により、状況や求めることも変わってくるでしょう。海外就労という言葉だけを見ると魅力的に映るかもしれませんが、就労には代わりありません。自身の人生設計と照らし合わせて悔いのない選択をされることを願っています。
まとめ
今回の記事では、マレーシアの現地採用の現状について現地採用経験者のリアルな声と共にお届けしました。メディアの影響もあり、マレーシアの現地採用=BPOというイメージが大きいことは否めませんが、日系・ローカル問わず製造業や卸業を中心とした多くの企業で現地採用の雇用で就労する日本人も多いです。
人材派遣サイトはもちろんのこと、現地の無料情報誌では毎週新規採用募集も掲載されており、マレーシアでの日本人採用の需要は非常に高いと言えます。もしあなたがこれから現地採用でのマレーシア就職を検討されているのであれば、今回の記事で紹介した”落とし穴”には十分に気をつけていただいた上で、素晴らしいご縁を見つけられることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。