コラム記事
10.232023
東南アジアの中心・マレーシアの人口構成についてセグメント別に詳しく解説
魅力的な海外移住先として毎年上位を維持し、日本人にも人気のマレーシア。日本から約7時間のフライトで南下した東南アジアの一国であり、マレー半島とボルネオ島北部の二つの島から構成されています。面積はボルネオ島北部の方が大きいものの、人口の80%がマレー半島に居住している、という特徴を持つ国です。
実は生活インフラの充実度や事業コストが比較的安価という背景もあり、企業の海外進出の場としても人気で多くの日系企業が進出しています。首都クアラルンプール周辺をはじめとする主要工業地域がマレー半島に存在しているため、政治や経済の面においてもマレー半島が中心的役割を担っています。
日本と比べると人口は約1/4程度ですが、少子高齢化が進み人口が減っている日本とは対照的に人口が増え続けているマレーシア。”人口ボーナス期”に突入しているため、今後ビジネス面でも魅力的な市場となっています。
今後マレーシアでの就職や駐在赴任予定者、現地で起業予定の方にとって、マレーシアが今後どの程度のポテンシャルがある国なのかを知る上で大事な指標の一つが「人口」ではないでしょうか?今回は、明るい未来が感じられるマレーシアの人口構成の現状について、詳しく見ていきましょう。
マレーシアの人口/人口構成
マレーシア統計局によると、2022年時点でのマレーシアの人口は3,270万人。そして2023年の総人口は3,340万人と推定されています。年間人口増加率2.1%という数字は、日本人からすると驚きではないでしょうか?しかしながら、この数字はあくまでマレーシア在住者となるため、国籍(マレーシア人/外国人)についても知る必要があります。
国民・非国民別
国民・非国民別でマレーシアの人口を見てみると、以下の通りです。
2022年 | 2023年 | |
国民 | 3,020万人 | 3,040万人 |
非国民(外国人) | 250万人 | 300万人 |
2022年から2023年にかけて、国民の数は20万人増えたのに対し、非国民の数は50万人も増加。これは2022年4月からの国境の再開と、2023年1月からの「労働力再調整プログラム2.0」の実施によるものと考えられます。
実はマレーシアではオーバーステイや適切なビザを持たずに不法滞在する外国人が少なくない、という事実をご存じでしょうか?当地では黙認されている雰囲気がありますが、決して正しいものではありません。
政府もこの問題解決に向けた具体的なアクションを起こしており、「労働力再調整プログラム2.0」を通じて彼らの雇用を是正する動きを見せています。これらの主な対象は、建設業やサービス業、農業や家政婦などに従事する外国人で、2022年と同様に年末までに実施すると言われています。2022年末に実施した同プログラムでは数十万人の方が対象になったことからも、マレーシアでの外国人雇用の正常化にはまだまだ時間がかかりそうです。
クアラルンプールのコンドミニアムにはセキュリティと呼ばれる警備員が常駐しており、彼らの出身国はミャンマーやラオスが一般的です。また、ナニーやメイドの方々はフィリピンの出身者も多く、子供を持つ両働きの世帯や欧米系の富裕層家庭を中心に雇用されています。
建設業向けでも相当な外国人労働者需要もあるようで、クアラルンプールの通勤ラッシュ時には建設現場に向かうバスを見かけることが日常茶飯事です。
年齢別
日本の人口ピラミッドの形をご存じでしょうか?急激に進行した少子高齢化によって「逆ひょうたん型」と呼ばれる形に変わりました。残念ながら日本ではこの流れを自国民のみで止めることは極めて困難でしょう。
では、マレーシアはどうでしょうか?年齢セグメント別に人口を見てみると、このようになります。
2022年 | 2023年 | |
0〜14才 | 760万人(23.2%) | 750万人(22.6%) |
15〜64才 | 2,280万人(69.6%) | 2,340万人(70%) |
60才〜 | 360万人(11.1%) | 380万人(11.3%) |
65才〜 | 240万人(7.2%) | 250万人(7.4%) |
生産活動の中心となる15〜64才の生産年齢人口が2022年で全体の69.6%。日本の総務省統計局によると、日本の生産年齢人口の比率は2022年で59.4%です。
一般的に高齢者の括りになる65才以上は2022年で7.2%、2023年で7.4%なので0.2%増加。日本の65才以上の割合は2022年で29%であることを考えると、マレーシアは高齢化社会とは到底言えない状況ですが、今後は緩やかに高齢化が進むことは間違いありません。
また、0〜14才の若年層が2022年は23.2%、2023年は22.6%と減少しているため、少子化も少しずつ進んでいるようです。
性別別
次は、男女の性別別に見てみましょう。
2022年 | 2023年 | |
男性 | 1,700万人 | 1,750万人 |
女性 | 1,570万人 | 1,590万人 |
2022年、2023年ともに男性の方が多いようです。2022年では、女性100人に対し男性が109人となっています。
日本の男女別人口比率に関して、総務省統計局が発表するデータがありますので紹介します。
「人口を男女別にみると、男性が62,110,764人,女性が64,815,079人で,女性が2,704,315人多く、人口性比(女性100人に対する男性の数)は95.8で平成7年に比べ0.4ポイント低下している。」
男女別人口 / 総務省統計局
マレーシアと異なり、「日本では女性の方が多い」という結果になりました。マレーシアのお隣の国インドネシアでも男性が多いという結果もあることから、何かしらの文化的背景があるのかもしれません。
民族・宗教別
マレーシアは日本のような単一民族国家ではない、ことをご存じですか?
マレーシアは主にマレー系、中華系、インド系から成り立つ多民族国家で、この多民族共存ゆえに誕生している「多様性」が、マレーシアが魅力的な国であり続ける理由の一つとして考えられています。
マレー系(先住民含む) | 中華系 | インド系 |
約70% | 約23% | 約7% |
中華系やインド系がマレーシアに存在する理由は歴史的経緯によるもので、1896年にマレー半島全体がイギリスの植民地となった際、経済成長に必要な労働力を確保するためインドや中国から大勢の労働者を雇用。そして彼らが当地に残り続けた結果が今のマレーシアが多民族国家となっている理由の一つです。
民族ごとに主な宗教は異なります。マレー系がイスラム教、中華系が仏教、インド系がヒンドゥー教を信仰しているという背景もあり、イスラム教(64%)、仏教(19%)、キリスト教(9%)、ヒンドゥー教(6%)、儒教・道教等(1%)、の構成。
国教はイスラム教と定められていますが、各民族の宗教的な大きな行事や祭りの日は国の祝日となり、街中ではそれぞれの家庭や地域でお祝いの儀式や集会が開催されます。多民族国家のマレーシアでは異宗教徒が身近にいることに慣れており、共存が可能な国家として成り立っています。
公用語はマレー語ですが、使用されている言語は民族によって異なります。マレー系はマレー語・英語、中華系はマレー語・中国語・英語、インド系はマレー語・ヒンディー語・英語、といった具合に、何カ国語も話すバイリンガルやトリリンガルが多くいることもマレーシアの強みです。
なお、ビジネスシーンでは一般的に準公用語の英語が使用されており、外資系や日系企業でのコミュニケーション言語は英語が一般的です。
地域別(クアラルンプール・セランゴール州)
マレーシアにはマレー半島の11州、ボルネオ島北部の2州と、3カ所の連邦地域(クアラルンプール、ラブアン、プトラジャヤ)から構成されていますが、マレーシアで就労を検討している日本人は、クアラルンプールもしくはセランゴール州を選択肢とされる方が大半でしょう。
「クアラルンプールは東京で言う23区で、セランゴール州は東京都?」と聞かれることがありますが、実は違います。セランゴール州の中に首都クアラルンプールがあるのですが、クアラルンプールは連邦地域のためセランゴール州とは別の管轄です。
いずれにせよこの2つの地域が、移住とビジネスの両面で日本人に最も関心が高いエリアであることには変わりません。ここからは、ビジネスの中心地であるクアラルンプールとセランゴール州をメインにマレーシアの地域別の人口も見ていきましょう。
2023年時点での地域別人口分布(メインの地域のみ)
セランゴール州 | 720.5万人 |
ジョホール州 | 410万人 |
サバ州 | 359.2万人 |
ペラ州 | 254万人 |
︙ | ︙ |
クアラルンプール | 199.8万人 |
首都クアラルンプールに隣接するマレーシアの中心的な地域セランゴール州がマレーシアの中で一番人口が多く、全体のおよそ20%の割合を占めています。
その次に多いのがマレー半島南部に位置し、隣国シンガポールと接するジョホール州。
首都クアラルンプールには2023年時点でおよそ200万人が住んでおり、全体の約5%を占めます。ちなみにクアラルンプールの面積は243k㎡で、東京都23区(622k㎡)の約4割ほどの広さです。
マレーシアの中で、15〜64才の生産年齢人口の割合が高い州のトップ5はこちらです。
クアラルンプール | 75% |
ペナン州 | 73.3% |
プルリス州 | 72.3% |
サラワク州 | 71.3% |
セランゴール州 | 71.1% |
年齢別指標における生産年齢人口の割合が70%という背景から見ると、どこかの地域が群を抜いて異常値を出すことはなさそうです。東京と同様に首都圏に生産年齢が集積するのはどこの国でも同じなのかもしれません。
今後の人口推移予測
2023年までのマレーシアの人口構成が分かったところで、今後マレーシアの人口がどのように推移していくのか、これまでの傾向を参考に予測してみます。
現在のマレーシアは人口が増え続けていて人口ボーナス期に突入していますので、このまま人口が増え続けていくでしょう。しかし国連人口部によると、2070年前後に約4,400万人のピークを迎えるだろうと予測されています。
また2023年時点での65才以上の高齢者は7.4%ですが、自治体国際化協会によると2040年には65才以上の高齢者が約15%となり、高齢化が進む見込みのようです。
上記の年齢別でも見たように14才までの若年層も若干減少していますので、少子化の進行は仕方がないことでしょう。
日本のベビーブームは1947〜49年頃と言われていますが、マレーシアのベビーブームは1991〜93年頃と言われていることからも、マレーシアは日本より45年程遅れて人口ボーナス期を迎えると言えます。そのため、今から45年後くらいには今の日本のような少子高齢化の現象が顕著に出てくるかもしれません。
まとめ
今回の記事では、マレーシアの人口構成と今後の推移について解説しました。人口増のボーナス期であるマレーシアは今後約4400万人という人口の頂点を目指してこれから40年先まで、経済成長を遂げていくでしょう。
大規模な建設プロジェクトは何件も着工されており、筆者が移住した2019年と比較してもクアラルンプールの中心街の景色は刻々と変化が見られます。
成長する場所に身を置くこともビジネスを成功に導く上で大切な要素ですので、ぜひマレーシアでのチャレンジを検討されてみてはいかがでしょうか。
最後までお読みくださりありがとうございました。