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マレーシアへの食品輸出を徹底解説 | 輸出成功の秘訣は「適切な商流」

東南アジアのマーケットは、食の分野での海外輸出の場合初心者向け市場でありつつも、実はマレーシアやシンガポールなどはそれなりの規模を構えているため、とても魅力的なマーケットです。特に原材料の規制が比較的緩やかなこともあり、輸入規制起因で導入が難しいというメーカーには出会ったことがありません。

とは言え、海外への輸出にチャレンジしたことがない企業にとっては何から始めればいいかわからない、という悩みもあるでしょう。実際に私も過去何度も海外での展示会に出展したものの、全く商流を作ることができず惨敗した経験があります。

そのような経験から今、私が皆さんに言えること。安心してください、中小メーカーであっても商流を理解すれば、定番導入の可能性があるルートで商談を持つことが可能です。今回の記事では、マレーシアへの食品輸出に関する基礎的な話を中心に説明します。

商流を理解する

海外輸出を目指す上でまず必要なこと、それは食品輸出における商流の大枠についての理解です。しかしながら、なぜか日本の多くの食品メーカー(特に中小企業)は、その点の対策をせずに展示会出展を優先させてしまうのです。この点については大手メーカーはさすが抜かりなく、市場調査を行った上で適切な販路にピンポイントでアプローチしています。

では、海外輸出の商流とはどのようなものでしょうか?下図にて簡単な流れを紹介します。

非常にシンプルな商流であることがお分かりいただけるでしょう。この仕組みとそれぞれのプレイヤーの役割をしっかりと理解することで、メーカーとして取るべき戦略が明確になります。弊社は2020年10月より日本ハラール認証商品の販売をマレーシアでスタート。今では現地の主力ローカル小売店に最大6SKUで定番を確保しています。

この3年間で多くの小売店や商社と商談し、累計100時間の店頭販売も実施しました。これらの経験からまず知っていただきたいマレーシアの商習慣、そして商流におけるキーマンは誰なのかを説明します。

コンサイメント契約が前提

この事実を伝えると驚かれる方が多いのですが、マレーシアではコンサイメント契約という委託販売が契約の条件という小売が大半です。また大手であれば棚代や商品登録費用も請求されるという、厳しい環境であると言えます。

驚くことに今日明日オープンする小売店であっても、仕入れ業者に対して同様の取引条件を求めてきます。そのような場合は商社の方が交渉力もあるので取引不成立(もしくは買取のみ)、という話を弊社のパートナー企業である卸問屋から聞くことがあります。

弊社でもSNS広告を介して取引の希望が定期的に来ますが、大半はコンサイメント契約なので取引をお断りする、もしくは買取でのお取引をお願いしている状況です。

リスクを取るのは輸入商社

しかしながら、モノが売れなければ商売として成立しません。商流において一体誰が一番リスクを取っているのでしょうか?結論から言うと、”輸入商社”です。販売先に関してはコンサイメント契約ではあるものの、仕入れに関しては前金一括支払いの企業が多いのです。

そのため輸入商社が展開する商品は、基本的に売れる商品がメインとなります。一刻も早く売上を回収する動機付けが強いので、大手メーカー中心の品揃えでさしすせそ系やベーシックな日本料理に欠かせない商材が充実しているのも、そのためです。

そしてそのような商品はハラール対応したものではありません。華人や駐在員をターゲットにした商材が99%、というのが日本食コーナーであると思っていただいても間違いないです。

このような現実は、実際に現地に足を運んで棚を確認しない限り知ることは難しいでしょう。

メーカーが取るべき戦略は

では、メーカーはどうするべきなのか?ということですが、答えはシンプルです。マレーシアの日本食コーナーで棚を持っている輸入商社に営業する、が最適解です。10年弱前に挑戦した海外展示会ではこのようなことを特に考えることもなく、バイヤーと会えれば良いと考えなんとなく出展していました。もちろん小売店の棚を管理する商社とは接点もなく、彼らに商品を輸出する日本国内の商社とも接点もないので、試食してそれで終わりという有りさまです。

具体的にどのように行動すれば、輸入商社を把握することができるのでしょうか?日本から輸入される食品には輸入情報を印刷したシールが貼り付けられていることに気付いている方は多いでしょう。まさにそのシールを確認すれば輸入商社にたどり着けます。しかしながら、そのためには適切な小売店を訪問する必要があります。

弊社ではクアラルンプールとセランゴール州を中心に展開する日本食を扱うローカル小売店、日系小売店の店舗クリニックや市場調査のサービスを提供しています。なんとなくネットで検索して店舗視察を行っても、訪問するべき店舗、各企業の立ち位置や取り組みに関する理解が難しいため結局は遠回りになりかねません。

マレーシアで販売されている日本の食品

マレーシアの小売店には幅広いカテゴリーの日本製品が輸入されています。ここからは、各カテゴリーごとにどのような商品や食材が販売されているのかを紹介します。

青果品

意外かと思いますが、日本の果物や野菜などの青果品をマレーシアの小売店で見かけることは多いです。輸入品ですから当然価格は高く、そのような高価格帯商品を販売できる小売店は限定的となり高級スーパーが中心です。しかしながらそれらはごく一部で、大半の青果品はマレーシアや中国製となり、オーガニック商材は国内外のものが取り揃えられています。

最近ではCHITOSEなどを代表に日系企業がローカルで日本スペックの青果製造を始めており、取扱店舗も増えていることから駐在員はもちろんのこと、ローカルにも人気を得ています。彼らは飲食向けの卸事業も展開しており、その戦略は日本の青果製造に取り組む企業が今後海外展開を検討する上でのあるべき姿、とも言えるかもしれません。

加工品

菓子や調味料などのグロッサリー品の取り扱いは、輸入品ということもあり高級小売店が中心。別の記事にも書きましたが、取り扱いの大半はノンハラール商品です。

これは小売店がコンサイメント契約(委託販売)が前提の取引ですので、輸入商社は確実に売れる人気商品を中心にした品揃えにならざるを得ません。具体的な例で言うと大手メーカーの人気菓子や、さしすせそ系など日本食を作る上で必須の調味料などはどこの店舗にも置いています。

しかしながらローカル小売店にも日本ハラール認証品が数社導入されていますので、チャンスがない訳ではありません。弊社の商品は複数の主力小売店で定番採用(最大6SKU)されております。

酒類

昨今、マレーシアでは日本酒が大ブームです。飲食店での導入は当然のこと、小売店でもSKUは増加傾向。JETROなどのバックアップもあり、2023年夏には日本酒の蔵元が集う試飲会がクアラルンプールで開催されました。そして、日本酒に関しては大手が強いという訳ではなく味やブランド力で戦えることが特徴です。しっかり適切なルートで営業できれば、定番採用の可能性は加工食品に比べても高いと言えます。

2022年、弊社で半年間営業代行サポートした酒類メーカーは、小売店と飲食店向けで6SKUほど採用されました。

飲料

日本製造の飲料も実は需要があります。日本食コーナーに陳列されている代表的なものは、ノンアルコールビール。取り扱いとしてはグロッサリーを輸入する商社の取り扱いが多く、日本食を取り扱う高級小売店を中心に販売されています。その他100均規格の小型缶ジュースなども見かけることもあります。

大手メーカーでは、自社でルート開拓を成功させ日本食コーナーではなくローカルの日配コーナーに導入されている企業もあります。ローカル製造のヤクルトなどもそのコーナーで展開しており、こちらの商品も商材とコーナーの相性が良く販売も好調と聞いています。

日本食をメインに扱う商社とビジネスが始まるとどうしても日本食コーナーでの採用が中心になりますので、取扱商品の特徴を考えて適切な商社を選ぶことがポイントです。

冷凍品

実は日本のアイスクリームのSKUは非常に充実しており、駐在員のみならず華人にも人気の商品です。価格もかなり競争力があり、ヨーロッパなど海外製品と比較しても非常に魅力的です。しかしながら、日本のアイスクリーム商材はハラール認証がない反面、ヨーロッパ製のハーゲンダッツはハラール認証を取得している点で、対象となるマーケットに差があります。

回転寿司系の店舗では日本のモナカアイスがスイーツとして販売されており、ハラール商品ではないためどのような基準で採用されたのか、非常に困惑します。(ノーポーク、ノーラードを謳う店舗が中心なので問題ないと判断しているとも推測しますが。)

その他日本製納豆や冷凍餃子、お弁当向け冷凍惣菜なども充実しており、これらは駐在員や帯同家族の弁当需要や普段の食事需要を狙った商材と見受けられます。特に人気の味の素の餃子は頻繁に欠品していますので、需要の強さが伺えます。

冷凍品輸出に関しては、取り扱える企業(=販路をしっかり持っている)がグロッサリーに比べてさらに限定的となること。そのため、まずは商品棚をしっかりと確認することが大事なポイントとも言えます。

まとめ

今回の記事では、マレーシアへの食品輸出の際の成功の秘訣、そして適切な商流について説明しました。カテゴリーごとに取り扱いを得意とする輸入商社がある、ということをご理解いただけたでしょう。

その点を理解せずなんとなく展示会に出展する、そして商談会に参加してしまうと商談の確度が非常に低くなりますので注意ください。そして、このアプローチはマレーシアに限らず他の国でも通用することですので、まずは輸出に取り組みやすいマレーシアでチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

最後までお読みいただきありがとうございました。

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